利用報告書

ナノカーボンの新たな生成とその応用
押田京一, 滝沢善洋(独立行政法人国立高等専門学校機構 長野工業高等専門学校)

課題番号 :S-20-SH-0001
利用形態 :共同研究型
利用課題名(日本語) :ナノカーボンの新たな生成とその応用
Program Title (English) :Novel production of nanocarbons and application
利用者名(日本語) :押田京一, 滝沢善洋
Username (English) :K. Oshida, Y. Takizawa
所属名(日本語) :独立行政法人国立高等専門学校機構 長野工業高等専門学校
Affiliation (English) :National institute of Technology, Nagano College

1.概要(Summary )
石炭由来などのピッチ系炭素は、その熱処理過程で特異な構造が観察されることがある。この構造は炭素六角網面の幅が狭く、ミクロンオーダで厚く長く積層しているにもかかわらず非常に薄く、巨大なグラファイト結晶を網面に垂直に薄く切出したような特異な構造である。このような構造の炭素がどのように生成されるのか、試料を光学顕微鏡(OM)、走査電子顕微鏡(SEM)および透過電子顕微鏡(TEM)で観察し検討した。
2.実験(Experimental)
実験サンプルとして、コールタールピッチ(pitch C)と合成ピッチ(AR pitch)を使用した。ピッチを、窒素ガス雰囲気中で、昇温速度4°C/s、保持時間15分、600°Cで熱処理した。 実体顕微鏡を使用して、特異な構造が多く含まれると考えられる熱処理により発砲したARピッチの孔壁部分の薄片を分離抽出した。これらの試料の黒鉛化過程での変化を調べるため、アルゴンガス雰囲気下で1600~2800°Cの範囲で熱処理した。熱処理した試料をOM、SMおよびTEMで観察し、画像処理するなどして、組織と構造を検討した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 図1はAR pitchを1000、2000および2800°Cで熱処理した試料のTEM像と2D-FFTで得られたパワースペクトル(PWS)およびPWSの中心点についての積分結果である。熱処理温度が高くなると炭素六角網面の間隔が狭くなり、黒鉛化が進んでいる様子がわかる。本事業により利用した高分解能TEMによる試料の観察とその積分結果から有用なデータが得られた。
 ピッチの熱処理過程における質量変化とOMで組織・構造変化を追跡した結果、熱処理により流動性を帯びた試料中に揮発性物質が発生し、気体に満たされた空孔が徐々に大きく成長して行く。この過程で炭素六角網面が形成されるが、分子量の大きな先駆体のピッチ材料では、炭素六角網面が大きく成長して動きにくくなり、場所によっては炭素六角網のbasal面が空孔表面で垂直に配置する。このタイミングで組織が固まり、特異な形状が残されたと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
 本研究の一部は、京都大学生存圏研究所木質材料実験棟共同利用研究および公益財団法人TAKEUCHI育英奨学会の助成金制度の援助を受けて行いました。ここに謝意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 押田京一, Sylvie Bonnamy, 藤澤拓実, 村田雅彦, 畑 俊充,第47回炭素材料学会年会, 1L08, (2020.12.9).
(2) 押田京一, 藤澤拓実, 滝沢善洋, 板屋智之, 畑 俊充, 第422回生存圏シンポジウム, 令和2年度 木質材料実験棟共同利用研究発表会, R2-WM-01, (2021.3.5).
6.関連特許(Patent)
なし

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