利用報告書
課題番号 :S-16-SH-0014
利用形態 :機器利用型支援
利用課題名(日本語) :ナノカーボンの生体応用
Program Title (English) :Biomaterial application for nanocarbon
利用者名(日本語) :羽二生 久夫, 齋藤 直人
Username (English) :H. Haniu, N. Saito
所属名(日本語) : 信州大学バイオメディカル研究所
Affiliation (English) : Institute for Biomedical Science, Shinshu University
1.概要(Summary)
人工関節開発における多層カーボンナノチューブ(Multi-walled Carbon Nanotubes、CNT)配合ポリエチレンの摩耗粉のワーストケースとしてCNT単体が生体に露出した場合を想定した安全性評価を行っている。昨年、分散による影響が炎症応答に関与しているマクロファージ様細胞で大きい事を報告した。そして、今年、CNTが血流に移動することを想定した静脈投与実験では肺組織へのCNTの蓄積が多く見られたことから、この蓄積が多く見られる肺由来のBEAS-2B細胞でのCNTの分散による細胞毒性の違いがあるかを昨年同様、超音波装置を変えてCNTの分散の違いによる細胞への影響を評価した。その結果,マクロファージ様細胞とは異なり、細胞毒性の出方は分散状態だけでなく、分散剤の影響も大きいことが明らかとなり、in vivo実験も含め,疑似摩耗粉の暴露条件は十分検討する必要がある。
2.実験(Experimental)
培養細胞はヒト気管支上皮細胞BEAS-2B(ATCC)を用いた。CNTはFT9110(CNano製)を牛胎児血清(FBS)とポリソルベート(PS)でタイプの異なる超音波分散装置(PR-1:シンキー,US-1R:アズワン,W-220: Heat Systems-Ultrasonics)で分散し,その分散像をTEM(日本電子)で観察した。この分散CNTを細胞に暴露し,細胞毒性はアラマーブルー試薬を用いた方法で蛍光プレートリーダー(Eppendorf)を使って測定し,炎症反応をCBA flex法でフローサイトメーター(Becton Dickinson)で測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
高出力なPR-1分散機による分散剤ごとの形態像を図1に示す。どちらも良く分散しており、見た目上は分散剤による分散の違いは見られなかった。一方でこれまで使われてきた一般的な分散装置ではCNTの凝集像が見られ、分散が十分であるとは言い難かった。このように異なる分散状態と思われたCNTであるが、BEAS-2Bでの細胞毒性結果は図2に示すとおりであり、分散剤によってその分散状態の細胞毒性への影響が全く異なり、FBSでは統計的有意差はあるものの細胞毒性の評価基準である細胞生存率が70%以下にはどの分散機での分散CNTでもなっていない。一方、PSで分散させたCNTはマクロファージ様細胞と同様に最も分散状態が良いPR-1では細胞毒性がほとんど見られず、US-1Rでは生存率が60%を切っていた。
これらの結果から擬似摩耗粉を模した安全性評価を行う際には、その対象物の暴露部位によってその分散条件自体の影響を検討した上で行う必要があることが明らかになった。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
Kuroda C, Haniu H, et al., The dispersion state of tangled multi-walled carbon nanotubes affects their cytotoxicity. Nanomaterials 2016;6:219.
6.関連特許(Patent)
なし