利用報告書

ナノカーボン(グラフェン・チューブ)とポリマーのコンポジット材料における 電子励起状態研究
田邉一郎, 小橋健太, 尾崎幸洋
関西学院大学

課題番号 :S-15-MS-0042
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :ナノカーボン(グラフェン・チューブ)とポリマーのコンポジット材料における
電子励起状態研究
Program Title (English) :Investigation of excitation electronic states of nano-carbon (graphene and nanotube) and polymer nanocomposite materials
利用者名(日本語) :田邉一郎, 小橋健太, 尾崎幸洋
Username (English) :Ichiro Tanabe, Kento Kobashi, Yukihiro Ozaki
所属名(日本語) :関西学院大学
Affiliation (English) :Kansei Gakuin University

1.概要(Summary )
関西学院大学尾崎研究室で開発した減衰全反射型遠紫外分光装置によって測定した、ナノカーボン材料(グラフェンやカーボンナノチューブ)とポリマーとのナノコンポジット材料の、実験スペクトルのバンドの帰属を行うために、江原正博教授の協力の下SAC-SAC/CI 法を主に用いて量子化学計算を行うことを目的とする。これまでに、EPDMやSBRに微量のグラフェンやカーボンナノチューブを添加すると、ポリマーの遠紫外スペクトルに変化が起きることが分かってきた。これらがコンポジット中で近接した時にどのように変化するか、いかなる相互作用が実験で得られたスペクトル変化を説明するかを、量子化学計算によって探る。

2.実験(Experimental)
大規模量子化学計算を利用し、ポリマー(PDMS)の励起状態スペクトル計算を行った。計算モデル分子の炭素鎖の長さを変えたり、分子末端を変えたり(水素にするかメチル基にするかなど)することで、比較を行った。また、長距離力を考慮した基底関数を採用することによる比較も行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
これまでの実測スペクトルの結果から、グラフェンやカーボンナノチューブなどのカーボンナノ材料は波長250 nm程度をピークとして近紫外域に吸収を持ち、カーボン材料と相互作用させるEPDMやSBRなどのポリマーは、波長200 nm以下の遠紫外域にも吸収を持つことが分かっている。グラフェンのスペクトルは鞍点近傍から計算される状態密度に比例し、ポリマーの電子状態はπ電子や非共有電子対 および骨格のσ電子と考えられる。さらに、ポリマー中に少量のカーボンを添加することで、ポリマー由来のスペクトル形状が変化することが明らかになった。
今回の計算事件において、計算モデル分子の炭素鎖の長さを変えたり、分子末端を変えたり(水素にするかメチル基にするかなど)することで、計算スペクトルに違いが見られたため、それらに対する考察と確認を行った。
また、長距離力を考慮した基底関数を採用することで、実測スペクトルで特徴的に変化したスペクトルが現れるらしいことが明らかになりつつある。
現在もシミュレーションモデルを変えながらスペクトル計算を行い、実測されたスペクトル変化の起源について考察を進めている。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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