利用報告書

ナノ材料を用いたガスセンサーの作製と微視的アプローチによる応答メカニズムの解明
樹大輔, 田畑博史
大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻

課題番号 :S-15-OS-0032
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ナノ材料を用いたガスセンサーの作製と微視的アプローチによる応答メカニズムの解明
Program Title (English) :Fabrication of Gas Sensor Based on Nanomaterials and Investigation of Their Response Mechanism by a Microscopic Approach
利用者名(日本語) :樹大輔, 田畑博史
Username (English) :D. Ueki, H. Tabata
所属名(日本語) :大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻
Affiliation (English) :Dep. of Electrical, Electronics and Information Eng., Grad. School of Eng.,
Osaka University

1.概要(Summary)
単層カーボンナノチューブ(以下、carbon nanotube: CNT)は、大きな実効表面積や優れた電気伝導特性から抵抗変化型ガスセンサーのセンシングコア材料としての利用が期待されている。センシングコアには、多数のCNTのネットワークで構成されるCNT薄膜が用いられる。このようなCNT薄膜では、CNT自体の抵抗の変化よりもむしろ、CNT同士の接触部分(ジャンクション)の抵抗の変化がガスに対する応答に寄与していると考えられている[1]。しかし、ガス吸着によるCNTジャンクションの接触抵抗変化を直接観察した例はない。そこで、本研究では、様々なガス雰囲気下でAtomic Force Microscopy (AFM)測定が可能な環境制御型走査プローブ顕微鏡を用いてCNTジャンクションのAFM電流同時測定を行い、ガス吸着による接触抵抗変化を直接観察することを目的とした。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
環境制御型走査型プローブ顕微鏡システム
【実験方法】
水平配向CNTを90度回転させて重ね合わせることで、多数のCNTジャンクションを有する構造を形成し、一方向のCNTの片側に電極を取り付けることによって、Fig.1の様な試料を作製した。この試料について、N2雰囲気中および酸化性ガスのNO2(5 ppm)雰囲気下でAFM電流同時測定を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig.2 (a), (b)に、それぞれN2中とNO2(5 ppm)中で測定した電流像を示す。便宜上、電極とつながっているCNT(右上から左下に伸びるCNT)をCNT-A、それと交差するCNTをCNT-Bとする。各点における電流量はこの電極とプローブ接触点間のすべての経路を流れる全電流を表している。CNT-プローブ間の接触抵抗が接触具合によって異なるため、電流値は測定位置あるいは測定のたびに大きく変動する。しかし、直接電極とつながっているCNT-A上の方が概して電流値が大きく、ジャンクションを介したCNT-Bでは、電流値が小さくなっていることが分かる。Fig.2(a),(b)を比較すると、CNT-A(特に右下のCNT)は、NO2雰囲気において大きく電流が増加している。これはCNT-電極界面の接触抵抗がNO2分子の吸着により減少したためと考えられる。一方で、CNT-B上では、電流の増加はほとんど見られなかった。CNTジャンクションの接触抵抗がNO2吸着によって変化するのであれば、CNT-B上の電流の増加が観察できると予想したが、この結果は予想に反するものであった。この原因として考えられるのは、ジャンクション抵抗がCNT -電極界面の接触抵抗と比べてかなり大きく、また、NO2吸着による抵抗変化が微少であったためだと考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
○北島彰様(ナノテクノロジー設備供用拠点)に感謝いたします。
参考文献[1] A. Boyd et al., Carbon 69 (2014) 417.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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