利用報告書

ナノ薄膜が形成する凹凸パターンに関する研究
永島 壮(大阪大学大学院工学研究科)

課題番号 :S-20-OS-0032
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ナノ薄膜が形成する凹凸パターンに関する研究
Program Title (English) :Study on pattern formation in thin films
利用者名(日本語) :永島 壮
Username (English) :S.Nagashima
所属名(日本語) :大阪大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Engineering, Osaka University

1.概要(Summary)
 硬質薄膜と柔軟基板から成る薄膜−基板系の表面不安定現象は,系表面に凹凸パターンの自律形成を誘発する。パターンの形状や寸法は,力学環境や材料特性に応じて多様に変化するため,幅広い工学応用が注目される(1)。本課題は,白金薄膜とポリジメチルシロキサン基板から成る系において,薄膜の厚さが凹凸パターンの寸法に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。今回,大阪大学ナノテクノロジープラットフォームの装置を利用し,イオンスパッタ法により作製した白金薄膜の厚さを測定した。

2.実験(Experimental)
【利用した装置】
S17 接触式膜厚測定器(膜厚計)
S15 走査型プローブ顕微鏡(E-sweep)

【実験方法】
 上記装置群を用いて,イオンスパッタ法(JEC-3000FC,JEOL)により作製した白金薄膜の厚さを測定した。平滑な表面を有するシリコンウェハーを基板とし,その一部をマスキングして成膜した。成膜後にマスキングを除去することで成膜領域と非成膜領域を設け,その段差を膜厚として測定した。成膜時間が膜厚に及ぼす影響を明らかにした。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 本研究で作製した薄膜−基板系表面の光学顕微鏡画像をFigure 1(a)に示す。凹凸パターン(リンクル)が生成し,ランダムに配向している様子が観察される。この結果より,リンクルは膜内残留応力を駆動力として等二軸圧縮下で生成したと考えられる。成膜時間と膜厚の関係をFigure 1(b)に示す。成膜時間の増加に伴い膜厚が増加した。特に,成膜時間を調節することにより,膜厚をシングルナノオーダーで制御できることを明らかにした。以上の知見に基づき,シングルナノオーダーで膜厚を変化させた薄膜−基板系を作製し,膜厚がリンクルの寸法(特に頂点間距離)に及ぼす影響を明らかにした。詳細な結果と考察は,下記利用者の原著論文を参照されたい。

4.その他・特記事項(Others)
・参考文献:(1) Q. Wang and X. Zhao, MRS Bull. 41, 115 (2016)
・本課題はJSPS科研費 JP19K14843の助成を受けて実施されました。ここに記して謝意を表します。
・装置使用方法に関してご指導いただきました大阪大学分子・物質合成PFの支援員の方々に感謝いたします。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) S. Nagashima and A. Nakatani, under review (2021)

6.関連特許(Patent)
なし。

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