利用報告書

ニトリル置換ジチアシクロペンテンオリゴマーの合成と固体状態での分子配列と電子状態の解明
植田一正
静岡大学学術院工学領域

課題番号 :S-19-MS-1038
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :ニトリル置換ジチアシクロペンテンオリゴマーの合成と固体状態での分子配列と電子状態の解明
Program Title (English) :Investigation of molecular arrangements and sold state electronic states of nitrile substituted dithiacyclopentene oligomers
利用者名(日本語) :植田一正
Username (English) : K. Ueda
所属名(日本語) :静岡大学学術院工学領域
Affiliation (English) :College of Engineering, Academic Institute, Shizuoka University

1.概要(Summary )
固体中での分子配列を制御することにより、固体状態で近赤外光領域に大きな吸収を持つ有機半導体の探索を、申請者はこれまで続けてきた。今年度はフタロニトリル環の縮環したジチアシクロペンテンオリゴマーの誘導体を合成し、貴研究所所有の単結晶X線構造解析装置を用いて分子配列を解明し、固体の光吸収挙動を考察した。
 オリゴマーの末端にイソプロピルチオ基の置換した誘導体の固体の吸収スペクトルは可視光領域のみに大きな吸収を示すのに対し、n-ブチルチオ基の置換した誘導体のものは可視光および近赤外光領域に大きな吸収を示した。分子配列の比較より、近赤外光領域の吸収を持つ誘導体では、隣接分子間の骨格構造の重なりがより大きいことが明らかとなった。
2.実験(Experimental)
ジチアシクロペンテンオリゴマーには3つのジチアシクロペンテン環が二重結合で連結されたものを骨格構造として用いた。この骨格構造の一方の端にフタロニトリルを縮環し、もう一方の端に固体中での分子配列制御のためのアルキルチオ基を導入した。アルキルチオ基としてイソプロピルチオ基あるいはn-ブチルチオ基を導入した誘導体を合成し、それらの固体状態での光吸収挙動および結晶構造を明らかにした。
測定に用いた単結晶は、これらの誘導体をトルエン―メタノールの混合溶媒中、冷蔵庫で再結晶することにより作成した。単結晶X線回折装置としてRigaku MERCURY CCD-1、MERCURY CCD-2、HyPix-AFCを用い、室温から-100℃の温度範囲で測定を行った。固体の吸収スペクトルは次のようにして得た。積分球ユニットを取り付けたUV-Vis-NIR分光光度計(日本分光製V-670)を用いて粉末試料の反射スペクトルを測定し、得られたスペクトルをKubelka-Munk変換することにより固体の吸収スペクトルとした。
3.結果と考察(Results and Discussion)
イソプロピルチオ基およびn-ブチルチオ基の置換した誘導体の希薄溶液中での吸収スペクトルは類似の可視光領域の吸収挙動を示した。一方、固体の吸収スペクトルでは、n-ブチル基の置換した誘導体のスペクトルのみが、可視光領域だけでなく近赤外光領域にも大きな吸収を示した。
 単結晶構造解析による分子配列の比較を行ったところ、隣接分子間のジチアシクロペンテン環の重なり具合に大きな違いがあることを見出した。イソプロピルチオ基の置換した誘導体では、1つのジチアシクロペンテン環のみが重なり合っていたのに対し、n-ブチルチオ基の置換した誘導体では2つのジチアシクロペンテン環が重なっていた。
現在、この積層の違いと光吸収に相関があるのかどうかを、複数分子を入力座標として用いた計算化学により明らかにしようと試みている。
4.その他・特記事項(Others)
本研究に用いた化合物は静岡大学総合科学技術研究科の杉本伸哉氏、静岡大学工学部の竹内礼夏氏そして本課題の利用者との共同で合成された。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K. Ueda, et al., 日本化学会第100春季年会2020、令和2年3月22日.
6.関連特許(Patent)
なし

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