課題番号 ：Ｓ-16-ＭＳ-1018
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：フッ素を有する置換基を配位子に導入した単一分子性伝導体の合成と物性研究
Program Title (English) ：Synthesis and physical properties of single-component molecular conductors with fluoroalkyl substituents
利用者名（日本語） ：周　彪
Username (English) ：Biao Zhou
所属名（日本語） ：日本大学文理学部化学科
Affiliation (English) ：Department of Chemistry, College of Humanities and Sciences, Nihon University

１．概要（Summary ）
単一分子性伝導体は、一種類の分子が自己集積して自然に金属結晶をつくり出すという、従来にない新しい特性を持つ特異的な分子である。小林らが末端にCF3基を持つジチオレン配位子を用いた金属錯体[Ni(hfdt)2]の7.5GPaの圧力下における転移温度5.5Kの超伝導転移を示す興味深い結果を発表した[1]。単一分子性金属の興味深いところは、中心金属を別の金属に置換すると物性が異なる単一分子性金属を作ることができることである。本研究では中心金属が異なる単一分子性錯体の類似系を開発し、それらの構造決定、物性測定より新たな単一分子性伝導体・超伝導体の探索を行う。単一分子性伝導体についてより一層理解を深め、更なる物質開発の展開をはかることを目指した。

２．実験（Experimental）
分子科学研究所でのSQUID型磁化測定装置Quantum Design MPMS-7とMPMS-XL7を用いて磁気特性の測定を行った。

３．結果と考察（Results and Discussion）
[Ni(hfdt)2]と同様に、[Pd(hfdt)2]は配位子末端のCF3基によって強く分離され、二次元的な層状構造を形成していることが判明した。[Pd(hfdt)2]粉末試料の室温電気伝導度は3.7×10-3S/cmであり、半導体的な温度変化を示すことが明らかとなった。[Pd(hfdt)2]は強い二量体構造により、バンドギャップを持つ非磁性状態

[Pd(hfdt)2] [Pd(dmdt)2]
になったと予想される。また、今年度私たちは、hfdtの類似配位子dmdtを持つ新しい単一分子性金属である[Pd(dmdt)2]の合成し、結晶構造、磁性および伝導性を調べた。SPring-8での粉末X線回折実験により、[Pd(dmdt)2]と[Ni(dmdt)2]が同形構造をしていることが分かった。[Pd(dmdt)2]微小結晶を押し固めた試料の室温伝導度は40 S/cmであり、温度依存性をほとんど示さないことが分かった。120 K以下での磁化率は非常に小さいであることが分かった。

４．その他・特記事項（Others）
[1] H. Cui, H. Kobayashi, S. Ishibashi, M. Sasa, F. Iwase, R. Kato, A. Kobayashi, J. Am. Chem. Soc., 2014, 136, 7619

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) R. Takagi, T. Hamai, H. Gangi, K. Miyagawa, B. Zhou, A. Kobayashi, K. Kanoda, Physical Review B, Vol.95 (2017) 094420.
(2) S. Ogura, Y. Idobata, B. Zhou, A. Kobayashi, R. Takagi, K. Miyagawa, K. Kanoda, H. Kasai, E. Nishibori, C. Satoko, B. Delley, Inorganic Chemistry, Vol.55 (2016) 7709-7716.
(3) 石井健、劉琪志、周彪、笠井秀隆、西堀英治、小林昭子、日本化学会第97春季年会、平成29年3月
(4) B. Zhou, The 15th International Conference on Molecule-Based Magnets (ICMM2016), Sendai, Japan, September 2016

６．関連特許（Patent）
なし