利用報告書

フッ素樹脂シートの表面改質
大里 敦志
中興化成工業 株式会社

課題番号 :S-16-KU-0001
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :フッ素樹脂シートの表面改質
Program Title (English) :Surface modification of fluororesin sheet
利用者名(日本語) :大里 敦志
Username (English) :Ohsato Atsushi
所属名(日本語) :中興化成工業 株式会社
Affiliation (English) :CHUKOH CHEMICAL INDUSTRIES, LTD.

1.概要(Summary )
PTFE (Polytetrafluoroethylene, – [CF2–CF2]n– ), PFA (Perfluoroalkoxyfluoroplastics, –[CF2 – CF2]n – [CF2 – CF(OCF2CF2CF3)]m– ) 等のフッ素系樹脂材料は、耐熱性・耐薬品性・電気絶縁性・ガスバリア性・難燃性・電気特性・低摩擦性などにおいて優れた性能を有することから様々な用途展開が図られている。しかしながらフッ素樹脂は、自己または他物質と接着し難く、積層化やめっきが極めて困難である。これらを可能にできれば多方面の応用が開ける。
フッ素樹脂を異種材料と接着する為には、通常、表面処理が不可欠である。PTFE の場合、金属ナトリウム錯体溶液を用いる処理法が現在主流であり、高い接着力が得られるものの、環境面からクリーンな代替手法が望まれている。そこで、ドライエッチング1-2) による PTFE の表面改質技術の検討を行った。
2.実験(Experimental)
PTFE スカイブドフィルム(厚さ 0.10 mm:中興化成工業製)の片面をドライエッチング処理した。
電子状態測定システムAXIS-ULTRA( XPS装置:島津製作所製)を用いて(技術代行)、表面をドライエッチングにより改質したPTFE フィルムの元素分析を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
片面をドライエッチング処理したフィルムに対し、純水(表面張力 72 mN/mm )の濡れ性を確認したところ、処理面は濡れ、未処理面はハジけた。通常のPTFE の水接触角は 114o でありハジけるが、ドライエッチング処理によって親水性官能基がフィルム表面に修飾されたものと推測される。
次に片面をドライエッチングしたフィルムの、未処理面および処理面のXPS 分析結果を表1に示す。
表1 XPSにより得た PTFE 表面の原子比(%)
元素 未処理面 処理面
C 1s 31.7 57.1
F 1s 68.2 32.0
O 1s 0.06 9.8
N 1s 0.00 1.1
計 100.0 100.0
通常のPTFE は理論上、酸素O、窒素Nを含まず、炭素C : フッ素F = 1:2 の原子比(理論値)で構成される。
表 1より、未処理面の原子比は理論値に近いことが分かる。 一方、処理面には炭素Cおよびフッ素Fの他に、酸素Oおよび窒素N元素が含まれていることが分かった。これは、水の濡れ性が向上したことからも、ドライエッチングに伴い酸素Oおよび窒素Nを含む極性官能基がフィルム表面に修飾されたことを示唆する。また、フッ素Fよりも炭素Cの比率が大きくなっており(表1処理面)、これは PTFE 高分子鎖中のフッ素原子 F がドライエッチングにより系外へ排出されたため(C-F 結合の切断とFの放出)と考えられる2)。4.その他・特記事項(Others)
<参考文献>
1)遠藤正雄, 長瀬智洋,フッ素樹脂の表面改質法,
特願平5-12500, 出願日平成5年1月28日.
2)木上裕貴, 藤原圭子, 村木勇三, 接着シート,
特願2014-36426, 出願日平成26年2月27日.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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