利用報告書
課題番号 :S-18-MS-3002
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :フラーレン誘導体LB薄膜の表面観察と評価
Program Title (English) :Surface observation and characterization of LB films of fullerene derivatives
利用者名(日本語) :日野和之1)
Username (English) :K. Hino1)
所属名(日本語) :1) 愛知教育大学教育学部
Affiliation (English) :1) Aichi University of Education
1.概要(Summary )
フラーレンを基板に1層から数層堆積させた薄膜は、電子デバイスや光学材料としての利用をはじめ、潤滑性能等の力学的特徴を生かした応用等も含む、多彩な用途での利用が検討されている。しかしフラーレンは成膜の際に凝集しやすく、またその整列・配向の制御も困難であり、品質の安定性の確保や、性能発現機構の詳細な検討は不充分であった。そこで我々は、両親媒性のフラーレン誘導体である「硫酸化フラーレン」を合成し、この分子が気液界面に単分子膜を形成する性質を利用して、LB法により、ガラスまたはITO基板上に硫酸化フラーレンが規則的に配列した薄膜を作製することを試みた。その結果稠密な単分子膜が得られ、また、電気化学測定から、この膜が溶液中の反応物イオン電荷選択的電子移動を示すことが分かった。本研究では、LB薄膜が単分子膜であることをZygoによる膜厚測定を行うことで確認し、さらに複数層堆積させた場合についても評価する。
2.実験(Experimental)
はじめに、界面活性剤でフラーレンを分散させることを検討した。これまでにステアリン酸過剰の条件で、フラーレンを分散できることをπ-A曲線の測定により明らかにしている。今回は、ステアリン酸メチルとの混合系で、フラーレンを分散させることをZygoによる膜厚測定により検討した。さらに、硫酸化フラーレンの単層LB膜および複層LB膜の膜厚測定を行い、表面の均一性を確認した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
フラーレンとステアリン酸メチルを1:33の割合で混合したトルエン溶液を水面に滴下し、表面圧18 mN/mまで圧縮してLB転写した膜の膜厚測定の様子を示す(図)。相対的な高さの比を色で分けており、最も高い部分から赤、黄、緑、青の順で示している。赤色の点状の分布が観察され、約1 nmの高さのフラーレンが凝集することなく分散していることが確認できた。
図 混合LB膜の膜厚測定
脂肪酸類のマトリックスによるフラーレンの分散については、過剰量の脂肪酸を必要とする。一方、我々が作製した硫酸化フラーレン分子は、いわばフラーレンと界面活性剤が1:1の条件でフラーレンを分散し、単分子膜を形成できる。この硫酸化フラーレンの単層LB膜および複層LB膜について膜厚測定を行った。単層LB膜は膜厚2 nm、2層LB膜は膜厚4 nm、3層LB膜は膜厚6 nmであった。硫酸化フラーレンは分子長2 nmであると考えられるため、膜の積層が可能であることが確認できた。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 水野雄太ほか, 第12回分子科学討論会, 平成30年9月12日.
(2) 水野雄太ほか, 第8回CSJ化学フェスタ2018, 平成30年10月23日.
6.関連特許(Patent)
なし。