利用報告書

フレキシブルなセラミックス薄膜のナノスケール強誘電特性評価
西川 博昭(近畿大学生物理工学部)

課題番号 :S-20-OS-0058
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :フレキシブルなセラミックス薄膜のナノスケール強誘電特性評価
Program Title (English) :Nanoscale ferroelectric characterization for flexible ceramic thin films
利用者名(日本語) :西川 博昭
Username (English) :H. Nishikawa
所属名(日本語) :近畿大学生物理工学部
Affiliation (English) :Faculty of Biology-Orietend Science and Technology, Kindai Univeristy

1.概要(Summary)
 圧電体・強誘電体などにおいて、大きな物性値を得るためには結晶方位が揃ったエピタキシャル成長が有効である。我々はこれまで、誘電体SrTiO3や圧電体・強誘電体BaTiO3(BTO)などのエピタキシャル薄膜をプラスチックなどのフレキシブなポリマー基板へ転写することで、脆性材料である酸化物セラミックスを、大きな物性値を損なうことなくフレキシブル化するためのプロセス開発を進めてきた1, 2)。本研究ではその圧電性・強誘電性を評価し、フレキシブルデバイスとして応用が期待できるレベルへの性能向上を目指している。この目的に対して我々は、フレキシブル化エピタキシャルBTO薄膜の圧電性・強誘電性を走査型プローブ顕微鏡(圧電応答顕微鏡)の試行的利用で評価することができれば、試料全体として圧電性・強誘電性を示さなくても、局所的に圧電性・強誘電性を示す領域を確認できると考えた。そのうえで、目標とするフレキシブルデバイス応用が期待できる品質の薄膜を得るための試料作製プロセスを検討した。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
 S15 走査型プローブ顕微鏡(E-sweep)

【実験方法】
 エピタキシャルBTO薄膜は近大所有のパルスレーザ堆積装置を用いて作製した。これを薄膜転写プロセス1, 2)によってポリエチレンテレフタレート(PET)シートに転写してフレキシブル化エピタキシャルBTO薄膜(以下試料、構造はBTO/PET)を作製した。得られた試料を走査型プローブ顕微鏡(圧電応答顕微鏡、以下PFM)によって評価した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 試料の表面形態をPFMで観察することを試みたが、電圧によるチャージアップで撮像できなかった。そこで得られたエピタキシャルBTO薄膜にスパッタでPtを30 nm成膜し、これをPETシートに転写して試料を作製した(構造はBTO/Pt/PET)。Ptを装置のGNDと短絡することで、安定してPFM測定を行えるようになった(図)。圧電性・強誘電性の測定には至っていないが、BTOの成膜条件を調整してPFM測定を繰り返し、デバイス応用が期待できる薄膜作製を進める。

4.その他・特記事項(Others)
参考文献
1) Nishikawa et.al., JJAP 53, 05FB06 (2014).
2) 馬谷ら、電気学会論文誌C 139, 211 (2019).

謝辞
 装置使用方法をご説明いただき、測定に必要なGND構造の形成にご助言くださいました分子・物質合成プラットフォームの北島彰先生に感謝いたします。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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