利用報告書

プラズマCVDによる低温SiN膜の成膜機構の解明
白谷正治1), 鎌滝晋礼1)
1) 九州大学 システム情報科学研究院

課題番号 :S-19-KU-0029
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :プラズマCVDによる低温SiN膜の成膜機構の解明
Program Title (English) :STUDY OF MECHANISM OF DEPOSITION OF SIN IN PLASMA CVD
利用者名(日本語) :白谷正治1), 鎌滝晋礼1)
Username (English) :M. Shiratani1), K. Kamataki1)
所属名(日本語) :1) 九州大学 システム情報科学研究院
Affiliation (English) :1) Graduate School and Faculty of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University

1.概要(Summary )
窒化シリコン(SiN)膜は, パッシベーション膜及び反射防止膜に利用されるなど, 半導体デバイスにおいて重要な役割を果たす. SiN膜の低温製造にはプラズマ化学気相蒸着(PCVD)法が用いられ, 製膜時の基板温度は350~400℃程度である. 既存のPCVDでは熱耐性が低い有機物の下地を利用することができないため, さらに低温(100~150℃)で高品質のSiN膜を作製できる手法が強く求められている. 利用者等がこれまでに開発してきたマルチホロー放電プラズマCVD(MHDPCVD)法ではクラスターを多く含む膜を下流領域に, クラスターの混入を抑制させた膜を上流領域に堆積させることができるため, クラスターの混入と膜質の関係を調べることができる[1, 2]. 本研究では, この方法を用いて基板温度100℃という低温で, 高窒化・低水素量のSiN膜を作製することに成功した.

2.実験(Experimental)
図1にこの装置の概略図を示す. この装置には3層から成るハニカム構造の空洞を持つ電極が設置されており, 原料ガスがこの電極を通過することで, チャンバー内にガス流が発生する. サイズの小さいラジカルは拡散速度が大きく, ガス流の影響を受けないが, サイズの大きいクラスターは, ガス流の影響を受け, ガス粘性力が加えられる. その結果, 気相中のクラスターは, 下流で多くなる. 本実験では, クラスターによる影響を調べるため, 下流領域で製膜を行い, 装置内のガス圧力をp = 0.5 Torr, 入射パワー P = 20W, 基板温度を55, 100℃とした. SiH4 = 1~10 sccmとし, 窒素流量をN2 = 10~300 sccmと変え, 水晶振動子式膜厚測定計(QCM)による計測と, 成膜後にFT-IRとエリプソおよびXPS計測により, 各薄膜の膜中の水素量[3]と屈折率を測定した.
   

3.結果と考察(Results and Discussion)
図2に, 下流における窒化度N/Siとクラスター混入量Rの窒素流量依存性を示す. 窒化度はN2 = 30 sccmに, RはN2 = 50 sccmにピークが存在した.窒化度N/Siとクラスター混入量Rの窒素流量二つのグラフは類似しており, 相関関係があると考えられた. 次に図3に窒化度N/SiとRの関係を示す.このグラフから, 窒化度はRと共に上昇することが分かった. 図4に水素量と屈折率の窒化度依存性を示す.両パラメータは窒化度の増加に対して減少している.これらの結果の傾向は, 他研究においても, 同様の結果が出されている[4].
以上のQCMによる結果から, クラスター混入量が上昇すると, 膜中の窒化度が上昇し, その結果, 水素量, 屈折率, 減衰係数が減少する傾向にあることが分かった.このことから, プラズマ気相中のクラスター制御が,低温成膜において重要であり, N2/ SiH4流量比と総流量を大きくすることによって制御することを検討した.
 図5にN2/ SiH4流量 = 300, 500 sccm/1 sccmとした時の, MHDPCVDの上流および下流で製膜したSiN膜の窒化度と膜中水素量を示す. 下流の膜の方が, 高窒化度で低水素量である. 低基板温では表面反応が生じにくく高窒化・低水素量のSiN膜を作製することは困難であるが, 高窒化度クラスターを気相生成し, 膜中に取り込むことで100度という低基板温度でも高窒化度・低水素量のSiN膜を作製できることが明らかになった.

4.その他・特記事項(Others)
・参考文献
[1] K. Keya, et al., Jpn. J. Appl. Phys. 55, 07LE03 (2016).
[2] S. Toko, et al., Surf. Coat. Technol. 326, 388 (2017).
[3] W.A.Lanford and M.J.Rand, Journal of Applied Physics, 49, 2473 (1978).
[4] H.P.Zhou et al., Applied Surface Science, 264, 21(2013).
・謝辞
九州大学分子・物質合成プラットフォームにおいて
X線光電子分光分析装置(XPS: AXIS-ULTRA)を使用させて頂いたことに感謝致します。

5.学会発表(Presentation)
(1) K. Kamataki, S. Nagaishi, Y. Sasaki, H. Hara, D. Yamashita, N. Itagaki, K. Koga, M. Shiratani, Low Temperature Fabrication of Low Hydrogen Content SiN films in a Multi-Hollow Discharge Plasma CVD, XXXIV ICPIG & ICRP-10, 2019/07/16.
(2) 永石翔大, 佐々木勇輔, 鎌滝晋礼, 板垣奈穂, 古閑一憲, 白谷正治, マルチホロー放電プラズマCVD法による高品質SiN膜の低温(100度)形成, 令和元年度日本表面真空学会 九州支部学術講演会, 2019/06/01.

6.関連特許(Patent)
なし

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