利用報告書
課題番号 :S-16-MS-0004
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :ペプチドのゆらぎを制御する足場タンパク質の標的結合メカニズムの解明
Program Title (English) : Binding mechanism of protein scaffold with constrained target-binding peptides
利用者名(日本語) :門之園 哲哉1), 太田 優美1)
Username (English) :T. Kadonosono1), Y. Ota1)
所属名(日本語) :1) 東京工業大学生命理工学院
Affiliation (English) :1) School of Life Science and Technology, Tokyo Institute of Technology
1.概要(Summary )
抗体は標的抗原に対して高い特異性と親和力を示し、治療標的タンパク質を認識する医薬品として治療に用いられており有望視されている。しかし抗体は複雑な構造と大きな分子量を持つため、限られた方法によってしか調製できず、コストが非常に高額になっている。そこで、分子量が小さく化学合成が可能で、標的結合性を有するペプチドや低分子量タンパク質が代替として期待されている。しかし、既存の分子は結合力が弱く(抗体の100分の1以下)、抗体に匹敵する感度で標的分子を検出することは不可能である。そのため、この問題点を解決する新たな標的結合分子の創製が望まれている。
申請者は先行研究において、標的結合性を有するペプチドの構造エントロピーと結合力の関係に着目し、標的結合ペプチドを足場タンパク質に組み込み、エントロピーを抑制することで、結合力を約100倍高めることに成功した。しかしながら、標的結合力が上昇する詳細な分子メカニズムが不明であり、この問いに答えるためには、原子レベルでペプチドの運動性を測定することが必要である。そこで、標的結合ペプチドのゆらぎを精密に測定するために、高磁場NMRでの測定を行った。
2.実験(Experimental)
足場タンパク質に組み込まれた標的結合ペプチドのゆらぎを原子レベルで比較し、結合に伴うゆらぎの変化を観測することで、足場タンパク質が結合のエントロピーを制御するメカニズムを明らかにすることを目指した。
抗原としてHER2ドメインタンパク質を調整し、NMR測定サンプルとして、HER2結合ペプチドを組み込んだ足場タンパク質を、大腸菌発現系を用いて同位体標識し、精製した。足場タンパク質は帰属が無いため、800MHz溶液NMRを用いてまず帰属用の測定と解析を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
13C15N標識した足場タンパク質を500μMの濃度に調整して25℃で測定を行った。しかし、開始から半日経過した時点で観測できないシグナルが出現し、2日経過するとより変性状態に近いシグナルが得られた。そこで変性を抑制するために、測定温度を4℃に変更して同様の解析を行ったが、改善は見られなかった。
今後は測定中の緩衝液を最適化したり、足場タンパク質をより安定なものに変更したりすることにより測定サンプルの安定化を検討し、引き続き解析を進めていく予定である。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







