利用報告書
課題番号 :S-19-OS-0037
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ホウ素中性子捕捉療法用ナノ粒子の評価
Program Title (English) :Evaluation of nanoparticles for boron neutron capture therapy
利用者名(日本語) :田村磨聖
Username (English) :M. Tamura
所属名(日本語) :大阪大学 核物理研究センター
Affiliation (English) :RCNP、Osaka University,
1.概要(Summary )
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、体外から照射した中性子と、細胞中に集積したホウ素との核反応で生じたα線による放射線治療である。ホウ素の細胞内集積量が高まるほどα線の発生確率が高まるため、がん細胞に高効率で集積するホウ素化合物が必要となる。今回、ホウ素化合物の候補として、窒化ホウ素ナノ粒子の粒径とゼータ電位の測定を行った。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
【実験方法】
80 nm程度の窒化ホウ素ナノ粒子を分散させた水溶液を用意し、超音波処理後に溶液をPBS(pH 5,7,9)へと調整した。測定直前に0.45 nmフィルターを通過した溶液を測定対象とした。ナノ粒子解析装置により粒径とゼータ電位の測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
窒化ホウ素ナノ粒子はpH 5,7,9の順に、粒径は280、360、410 nmであり、ゼータ電位は-22、-24、-40 mVであった。液中に分散前の粒子に比べて3.5-5.1倍の粒径が観測され、PDIが0.26-0.4と多分散であったことから、PBS中での速やかな凝集が示唆された。ゼータ電位はpH の増加に伴い低下傾向を示し、体内のpH範囲では常に-20 mV以下 のゼータ電位であることを確認した。
一般的に、血中投与型のナノ粒子は100 nm前後の粒径が望ましいとされており、窒化ホウ素ナノ粒子を血中投与すれば肝臓、肺でトラップされる可能性が高く、BNCTのホウ素化合物として窒化ホウ素ナノ粒子をそのまま採用するのは難しい。今回の実験で、水中での分散安定性の担保と、標的指向性を備えるための表面処理の必要性を認識するとともに、今後の表面処理の基となるデータを取得した。
4.その他・特記事項(Others)
本研究はJSPS科研費JP19H03513の助成を受けたものです。
装置使用方法に関してご説明頂きました大阪大学分子・物質合成PFの支援員の方に感謝致します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし