利用報告書

ホウ酸と低分子アルコール、カルボン酸の錯生成反応と錯体構造
真瀬田 幹生
佐賀大学総合分析実験センター

課題番号 :S-20-KU-0005
利用形態 :技術代行(試行的利用 採択No.01)
利用課題名(日本語) :ホウ酸と低分子アルコール、カルボン酸の錯生成反応と錯体構造
Program Title (English) :The complexation reaction and the structure of boric acid with low molecular weight alcohol and carboxylic acid
利用者名(日本語) :真瀬田 幹生1)
Username (English) :M. Maseda1)
所属名(日本語) :1) 佐賀大学総合分析実験センター
Affiliation (English) :1) Saga University Analytical Research Center for Experimental Sciences

1.概要(Summary )
 ホウ素は地殻中や海水中に豊富に存在しており、動植物にとって必須元素の一つである。一方で過剰摂取による毒性が報告されており、浄水中や工業排水中のホウ素濃度が規定されている。したがって、水中のホウ素濃度の効率的な定量法・除去法が求められている。
 また、医療分野ではホウ素中性性補足療法(BNCT)という”がん”の治療法が注目されている。BNCTはホウ素が中性子を取り込む性質を利用した治療法である。
ホウ素は水中で主としてホウ酸として存在しており、上述の水中のホウ素濃度定量法・除去法やBNCTにはホウ酸錯体が関わっており、ホウ酸錯体に関する基礎的情報を収集することは大変重要である。
本研究ではヒドロキシ酸を配位子としたホウ酸錯体の安定構造を量子化学計算で求め、錯体の安定に寄与する要因の検討を行った。

2.実験(Experimental)
 分子構造解析システムを利用し、B3LYP/6-311G+(2d,p)の計算レベルでホウ酸錯体の構造最適化を行った。その後、得られた安定構造に対してメチル基を回転させて、最もエネルギー値が低くなる構造を求め、NMR化学シフト計算を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 ホウ酸と配位子の結合位置による異性体について、構造最適化及び振動解析によって得られたエネルギー値を比較した。ホウ酸1分子に対し配位子1分子が結合した錯体は異性体によるエネルギー値が見られなかった。ホウ酸1分子に対し配位子2分子が結合した錯体については、有意なエネルギー差が認められた。錯体の五員環に結合しているメチル基同士の距離が近い錯体(Fig.1 a)よりも、距離が遠い錯体(Fig.1 b)の方がエネルギー的に安定であることが分かった。

a

b

Fig. 1 ホウ酸錯体の安定構造

4.その他・特記事項(Others)
本実験は、九州大学 利光史行先生にご支援頂きました。この場を借りて感謝申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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