利用報告書

ポリアミノベンゼンの合成
東村秀之(岡山理科大学理学部基礎理学科)

課題番号 :S-18-SH-0013
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :ポリアミノベンゼンの合成
Program Title (English) :Synthesis of a polyaminobenzene
利用者名(日本語) :東村秀之
Username (English) :Hideyuki Higashimura
所属名(日本語) :岡山理科大学理学部基礎理学科
Affiliation (English) :Department of Applied Science, Faculty of Science,
Okayama University of Okayama

1.概要(Summary )
 当方では、ヘキサカルボニルと1,2-フェニレンジアミン誘導体から窒素ドープ型グラフェン化合物を合成し、Co三核錯体とすることで燃料電池のPt代替触媒として機能することを見出している(1)。このポイントは三核錯体により多電子移動を容易にすることにあり、さらに多核化できれば多電子レドックス反応の速度を大幅に向上できることが期待できる。
 そこで、窒素ドープ型グラフェン化合物を拡張して、多核化することを目指し、ヘキサカルボニルとポリアミノ芳香族化合物を反応させることを検討している。

2.実験(Experimental)
1)ヘキサアミノベンゼンの合成(信州大学)
既報を参考にして、ヘキサアミノベンゼンを合成した。

2)窒素ドープ型グラフェン化合物の合成(岡山理科大学)
 まず、モデルとして3,4,3’,4’-テトラアミノビフェニルとヘキサカルボニルを反応させて窒素ドープ型グラフェン化合物(NDGR-1)を合成した。
 さらにNDGR-1とCu塩と錯体化し、新規な多核錯体化合物(Cu-NDGR-1)を合成した。
 Cu-NDGR-1を触媒として、2,6-ジメチルフェノールの酸化重合を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
得られたNDGR-1(図)はPXRD分析の結果、非晶性であることが判った。ビフェニル骨格の2つのベンゼン環がねじれるため、π共役が十分に広がっていない可能性がある。π共役が形成できないと、他電子移動が協働的に起こらないことが懸念される。
NDGR-1とCu塩から新規多核錯体Cu-NDGR-1の合成には成功したが、2,6-ジメチルフェノールの酸化重合触媒としては、反応活性が相当低いことが判った。
今後は、π共役平面を形成できるヘキサアミノベンゼンとヘキサカルボニルから窒素ドープ型グラフェン化合物(NDGR-2)を合成し、多核錯体化し、多電子移動反応触媒として検討する予定である。

4.その他・特記事項(Others)
本研究は、信州大学 浅尾直樹教授との共同研究によるものであり、ここに感謝申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) R. Liu, C. von Malotki, L. Arnold, N. Koshino, H. Higashimura, M. Baumgarten, Klaus Mullen, J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 10372-10375.

6.関連特許(Patent)
なし

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