利用報告書

ポリマー配線を用いたニューラルネットワーク型情報回路の創成
赤井恵, Gloh Kian LIian, 岡田将, 杉戸泰雅, 竹嶌 勇樹, 萩原 成基, 新田 純弥
大阪大学 工学研究科 精密科学・応用物理学専攻

課題番号                  :S-19-OS-0009

利用形態                            :機器利用

利用課題名(日本語)      :ポリマー配線を用いたニューラルネットワーク型情報回路の創成

Program Title (English) :Innovative neural network informational circuit consisting of conducting

 polymer wires

利用者名(日本語)          :赤井恵, Gloh Kian LIian, 岡田将, 杉戸泰雅, 竹嶌 勇樹, 萩原 成基, 新田 純弥

Username (English)         :M. Akai-Kasaya, G. K. LIian, M. Okada, Y. Sugito, Y. Takeshima, N. Hagiwara,

  1. Nitta

所属名(日本語)              :大阪大学 工学研究科 精密科学・応用物理学専攻

Affiliation (English)          :Department of Precision Science and Technology Graduate School of Engineering Osaka University

 

 

1.概要Summary

PEDOT:PSS(Poly(3,4,-ethylenedioxy- thiophene) polystyrene sulfonate)のワイヤー状重合成長は抵抗変化素子、自由空間配線、生体配線などへの応用が期待されている。電極間のコンダクタンス変化をメモリとして使用する為、そのコンダクタンス変化をもたらすワイヤーの伝導率やワイヤー断面の系、本数、形状、成長スピードは非常に重要になる。本研究ではワイヤー成長印加電圧のワイヤー径の周波数依存性、及び成長閾値電圧に着目して観察を行った。

2.実験(Experimental

【利用した主な装置】

S10 RFスパッタ装置

S14走査型電子顕微鏡

【実験方法】

作製した平面電極間に導電性高分子PEDOT:PSを重合させ, その開始閾値電圧を成長電圧の形状依存性を調査した。また成長後のワイヤー径を光学顕微鏡及びSEMによって観察することで、矩形波成長電圧におけるワイヤー径を計測した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion

成長電圧の波形を変更して印加してワイヤーを成長させ、その様子を光学顕微鏡にて観察した。ワイヤーが電極から成長し始めたと視認したときの電圧値(Vp-p)をそれぞれ記録した。印加電圧の波形は、矩形波、のこぎり波、三角波、正弦波の5種類であり、周波数は10 ~ 100 kHzの範囲に限定し、それぞれの条件下で成長が視認される閾値電圧を計測した。結果、三角波や正弦波と比較して、のこぎり波と矩形波はより小さい電圧値で成長が始まることが判った。また、のこぎり波では、矩形波の方がのこぎり波の場合の約半分の電圧値でワイヤー成長が始まっていた。

次に各周波数においてワイヤーを成長させ、周波数毎のワイヤー径について調査を行った。以下に100Hz及び1MHzでの周波数電圧で生成したワイヤーの光学顕微鏡像及びSEM像をFig.1に示す。

2μm

Fig. 1 Optical microscope and SEM image of PEDOT:PSS wire grown by square AC voltage with frequency of 100Hzand 1MHz, respectively.

PEDOT:PSSワイヤー径は印加電圧の周波数が高いほど小さくなっていることは明らかである。計測したワイヤー径を周波数毎にプロットし、対数を取ると径は周波数の-1/2乗に比例していた。これは単純な電界印加時間では説明出来ず、モノマー溶液の拡散や発熱による対流、電気泳動等、溶液内での複雑な条件が寄与していることが示唆された。

4まとめ

PEDOT:PSSは数ある導電性高分子の中で最も成功したもののうちの一つであり、膜状での使用は非常に多岐にわたっている。本研究にて示したPEDOT:PSSワイヤーはいまだ実用化には至っていないが、センサーや抵抗変化メモリなど様々な利用法が検討されており、近年では生体細胞への配線に成功したという報告もなされている。いずれの利用法においてもワイヤーの詳細な成長制御は必要不可欠な要素であると考えている。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation

  1. 萩原 成基, 岡田 将, 杉戸 泰雅, 浅井 哲也, 桑原 裕司, 赤井 恵, “導電性高分子ワイヤーを不揮発性抵抗変化素子として用いた機械学習の検討,” 第10回分子アーキテクトニクス研究会, 九州国立博物館, (福岡), 2019年11月7-8日.
  2. 萩原 成基, 岡田 将, 杉戸 泰雅, 浅井 哲也, 桑原 裕司, 赤井 恵, “導電性高分子ワイヤーを用いた相互結合型ネットワークの構築,” 第80回応用物理学会秋季学術講演会, 北海道大学, (札幌), 2019年9月18-21日.

©2026 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.