利用報告書
課題番号 :S-20-NU-0016
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :マタタビの雄花と雌花の生産する花粉に含まれる窒素炭素量の比較
Program Title (English) :Comparison of nitrogen and carbon contents in pollen between male and female flowers
利用者名(日本語) :三宅 崇
Username (English) :T.Miyake
所属名(日本語) :岐阜大学教育学部
Affiliation (English) :Faculty of Education, Gifu University
1.概要(Summary )
マタタビの雌花は内容物を含まず発芽能力のない偽の花粉を生産することで、花粉収集を行う送粉者を誘引する。これは植物が送粉者を欺く戦略と解釈されているが、これにより植物がどの程度資源を節約しているのかは明らかではない。そこで雌花の偽の花粉と雄花の花粉の炭素・窒素量を比較することで、節約量を定量的に評価する。
2.実験(Experimental)
マタタビの雌花及び雄花を野外で採集し、十分に乾燥させた後、篩を用いて花粉のみを集めた。これを定量後、全自動元素分析装置を用いて窒素含有率及び炭素含有率を測定した。
利用装置:
・全自動元素分析装置 PerkinElmer PE2400II
3.結果と考察(Results and Discussion)
雄花の生産する花粉と、雌花の生産する(発芽能力のない)花粉は、窒素や炭素の含有量に顕著な違いが見られた。窒素は雄花花粉で約7.5%含まれていたのに対し、雌花花粉では約2.5%しかなかった。一方で、炭素は雌花花粉の方が含有率が高かった。1花あたりでみると、窒素量も炭素量も雄花花粉の方が多かった。
以上より、雌花は資源を節約して発芽能力のない花粉を生産することが明らかとなった。花粉報酬を目当てに訪花する昆虫は、花粉を子どもの生育に必要な栄養源として集めているので、雌花の花粉を収集する際には、雄花の花粉を収集する際に得られるであろう栄養よりも少ない栄養しか得ることができない。つまり、マタタビの雌花は、栄養分の少ない花粉を生産することで送粉者を欺いて誘引していることが示唆される。
図 1 マタタビの雌花及び雄花の花粉に含まれる窒素及び炭素含有率(上段)と1花あたりの窒素及び炭素含有量(下段).
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし