利用報告書
課題番号 :S-19-KU-0037(試行的利用 採択通知_11)
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ミジンコの複眼が1つになる理由に迫る
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :古賀みのり,谷ノ口祐弥
Username (English) :Yuya Taninokuchi,Minori Koga
所属名(日本語) :佐賀県立鳥栖高等学校
Affiliation (English) :Tosu high school
1. 概要(Summary )
ミジンコは胚の状態から成長過程において複眼を2つから1つに合一させる。過去にこれらを発見した私たちは、この理由を探るため顕微鏡を用いてミジンコの一種であるSida sp.の個眼の数の計測を行った。偏光顕微鏡を用いて複眼を各方向から撮影したところ、Sida sp.の個眼の数は、一般的なミジンコの個眼の数とされている22個を大幅に上回るということが分かった。今後は幼体の複眼1つ1つの個眼数についても計測をし、どのように合一しているのかについてさらに詳しく探索していきたいと考えている。
2.実験(Experimental)
シダの頭部をスライドガラス上で切断し複眼を取り出し①光学顕微鏡(島津理化社 BA210E)、②偏光顕微鏡(Nikon Eclipse ME600)を用いて観察した。
また、ミジンコが光源に複眼を向ける性質を利用して、複眼に光を当てて個眼の数を計測した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
成体の複眼は上方から見ると楕円を2つ合わせたような形をしていて、個眼は複眼全体を覆っていた(図3)。個眼は卵形をしていて(図8)、全体で約40個あり(図6)、後方を除いた個眼は33個が右図のように並んでいた(図4)。幼体の個眼は成体のものよりも小さく、個眼の数は計測できなかった(図7)。前方から観察した成体の複眼は、肉眼で判別できるほど個体差が大きく、直径は100~250μm、個眼の直径は30~50μmだった(図5)。
次に研究2として幼体と成体の光走性に違いがあるかを調べ、複眼の機能に違いがあるかを調べた。
【方法➀】
直方体の透明水槽(幅16cm奥行き8cm高さ9cm)を正エリア(25%)中心エリア(50%)負エリア(25%)の3つのエリアに分け、光を照射する正の面以外を黒画用紙で覆った。エリアの境界に仕切りを入れ、中心エリアにミジンコを入れ、暗所で正の面から光を照射し、同時に仕切りを静かに外した。60秒後に再び仕切りを入れて各エリアにいるミジンコの個体数を調べた。なお、幼体は実験の直前に成体の育房から取り出し、遊泳を確認した個体のみを使用した。
【結果➀】
正エリア 中心エリア 負エリア
成体(匹) 44 (69.8%) 17 (26.9%) 2 (3.1%)
幼体(匹) 0 (0%) 5 (0%) 0 (0%)
成体の約70%が正エリアに移動したことに対し、負エリアに移動したのは約3%である。幼体は正エリア、負エリアのどちらにも移動しなかった。この結果から、幼体にとって水槽が大きすぎる可能性があるため、個体数ではなくミジンコの光に対する動きに注目して追加実験を行った。
【方法②】
目盛りの付いた直方体の透明水槽(幅15cm奥行き1cm高さ15cm)の中心にミジンコを1匹のみ入れて暗所で片側から光を20秒間照射して動画を撮り、1秒ごとに位置を記録した。これを5回繰り返した。なお、位置は中心を0として光を当てた方を正、もう一方を負とした距離(cm)を表す。
【結果②】
成体は全て負の向きに移動することなく正の端まで移動し、強い正の光走性を示したが、幼体は正にも負にも移動し、光走性がなかった。
【考察】
研究Ⅰよりシダの複眼は一般的なミジンコ目の複眼の個眼22個 よりも多いため、視覚器官を進化させた種だと言える。研究Ⅱより成体に正の光走性があるのは光に集まる性質がある一部の植物プランクトンを捕食するため、幼体に光走性がないのは本来育房内におり、捕食する必要がないためだと考えた。
複眼を2つから1つにする。という進化はミジンコ唯一のものであり、複眼を1つにすることで物体を立体的に視認できなくなるというデメリットが挙げられる。また、必要なくなった視覚を失わせる進化であるのなら、モグラなどのように視覚器官を小さくするのが一般的である。我々はミジンコの複眼が2つから1つになる理由について、視野を広くするためだと考えた。これはミジンコの成体の個眼が複眼全体を覆うようについているからである。また、ミジンコの捕食は植物プランクトンの位置を大まかに把握できれば十分であり捕食に立体視は必要がないと考えられる。今後はこの仮説を検証する必要があると考えている。
4.その他・特記事項(Others)
〇参考文献(References)
・ E.R.Macagno,Nature,1978,275,318-320
・Duke-Elder, S., System of Ophthalmology: Vol.1
The Eye in Evolution, Henry Kimpton, London, 1958.
〇謝辞(Acknowledgments)
本研究にご協力いただきました文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業様、そして研究に協力してくださった九州大学の利光史行先生にお礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Yuya Taninokuchi,Minori Koga,雑誌名, さが総文
論文集
(2) Yuya Taninokuchi,Minori Koga, 第43回全国高等学校総合文化祭さが総文, 平成31年7月27日6.関連特許(Patent)
なし。







