利用報告書

メスバウアー分光によるSn2M2O7 (M=Nb, Ta)におけるSnの価数評価
菊地直人, 川中浩史, 相浦義弘
国立研究開発法人産業技術総合研究所 電子光技術研究部門

課題番号 :S-15-NI-49
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :メスバウアー分光によるSn2M2O7 (M=Nb, Ta)におけるSnの価数評価
Program Title (English) :Valency of Sn in Sn2M2O7 (M=Nb, Ta) by Mössbauer spectroscopy
利用者名(日本語) :菊地直人, 川中浩史, 相浦義弘
Username (English) :N. Kikuchi, H. Kawanaka, Y. Aiura
所属名(日本語) :国立研究開発法人産業技術総合研究所 電子光技術研究部門
Affiliation (English) :Electronics and Photonics Research Institute, National Institute of Advanced
Industrial Science and Technology (AIST)

1.概要(Summary )
 パイロクロア構造のSn系酸化物Sn2M2O7 (M=Nb, Ta)の電気特性は、試料作製条件により大きく変化する。このSn系酸化物は、形式的に2価として存在するスズの一部が4価となり、イオン半径の近い5価のNb, Taサイトに置換することが報告されている[1]。本研究の目的は、メスバウアー分光によりこのSn系酸化物の4価のSnの置換量の定量評価を行い、電気特性の異なるSn系酸化物において、4価のSnの置換量との関連性を明らかにすることにある。

2.実験(Experimental)
パイロクロア構造のSn系酸化物Sn2M2O7 (M=Nb, Ta)は、焼結法による多結晶、および浮融帯溶融法(FZ法)による単結晶を用いた。多結晶の電気特性は、焼結条件(温度、雰囲気)により大きく異なる。メスバウアー分光は、通常の透過法にて78Kおよび室温(RT)で測定を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 メスバウアー分光により、我々が作製した全てのパイロクロア構造のSn系酸化物Sn2M2O7 (M=Nb, Ta)において、4価のSnが存在することが示された(図1)。概要で述べたように、この4価のSnはNbまたはTaサイトへ置換して存在すると考えられる。本研究により、この置換量は焼結条件により大きく変化することが示された。例えば、多結晶Sn2Ta2O7 (Sn2Ta2O7 #1 Polycrystal, Sn2Ta2O7 #2 Polycrystal)のメスバウアースペクトルは、同じSn系酸化物においても焼結条件の変えることにより4価のSnの置換量が大きく異なることを示している。これらの2つの多結晶Sn2Ta2O7の電気特性は、大きく変化する。
単結晶Sn2Nb2O7 (Sn2Nb2O7 #1 Single crystal, Sn2Nb2O7 #2 Single)はSn量(Sn欠損量)の異なる試料で、電気的・光学的振る舞いは類似している。今回のメスバウアースペクトルから置換量が同程度であることから、この系の電気特性はSn量に敏感でないこと推察される。
本研究は、パイロクロア構造のSn系酸化物の電気特性を理解するためには、4価のSnの置換の役割を理解することが重要であることを示唆している。

4.その他・特記事項(Others)
参考文献
[1] 例えば、D. J. Stewart, O. Knop, R. E. Meads, W. G. Parker, Can. J. Chem. 51, 1041 (1973).

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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