利用報告書

ユレーライト隕石中の炭素物質の分子構造と、衝撃変成度との関連の研究と、それによる始原天体の進化過程の解明
上椙真之1), 大東琢治2), 稲垣裕一2)
1) 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 2) 分子科学研究所

課題番号 :S-17-MS-2005
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語)  :ユレーライト隕石中の炭素物質の分子構造と、衝撃変成度との関連の研究と、それによる始原天体の進化過程の解明
利用者名(日本語) :上椙真之1), 大東琢治2), 稲垣裕一2)
所属名(日本語) :1) 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 2) 分子科学研究所

1.概要(Summary )
地球に飛来する隕石のうち、ユレーライトと呼ばれるクラスの隕石には、100µmオーダーの炭素物質からなる包有物が含まれていることが知られている。ユレーライト隕石の珪酸塩鉱物の酸素同位体比が炭素質コンドライトに近いことから、この炭素質包有物も、前駆物質に含まれている物である可能性が示唆されている。
 一方で、鉄と珪酸塩が分化するほどの高温を経験した天体に、炭素物質が包有物として含まれていることに対して、疑問も提示されている。炭素物質は外部天体由来であるという提案もなされているが、なぜユレーライトだけに炭素物質が見つかるのか、新しい疑問が残る。このように、炭素物質の起源を調べることは、はやぶさ2等の目標天体となっている始原天体が熱進化していく過程の重要な情報を得ることにつながる。
 ユレーライト隕石は衝撃によって組織が激しく変化していることで知られており、炭素物質もそれによってグラファイト、ダイヤモンドなど複数の相に分かれる。しかし、このダイヤモンドの起源も、衝撃変成起源だけでなく、宇宙空間の高真空状態でのCVD形成など、複数の説が提唱されている。
 本研究では、これまで調べられてこなかったユレーライト中の炭素物質の分子構造と微細組織構造の衝撃変成度との関連を、STXM-XANESで調べる
2.実験(Experimental)
本研究では衝撃変成度の違う複数のユレーライト隕石からFIBでピックアップした炭素物質部分の超薄切片をBL4Uに設置されたSTXM-XANESで分析し、極微細構造と分子構造を取得し、珪酸塩部から得られる衝撃変成度との関連を調べる。FIBを使用し、ユレーライトの研磨片から炭素物質部分を含んだ超薄切片を作成し、3mm径のFIBグリッドに固定する。これを新規開発したアルミの試料ホルダに固定して、STXMに導入し、C, O- NEXAFSで炭素物質の局所微細構造分析を実施する。使用するエネルギー帯は280-340 eV(C), 520-560 eV(O), である。分析後、試料はTEMによる微細組織観察を実施する。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図は、ユレーライト隕石のうち、衝撃変成を中程度受けたKenna隕石の炭素のマッピングである。ダイヤモンド、グラファイト、アモルファスの相が確認出来るが、衝撃変成によって形成されることが報告される、その他の炭素のフェーズは確認出来なかった。今後も継続的に衝撃変成の度合いの違うユレーライトを調べ、衝撃と炭素組織の関連を調べる。

4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.