利用報告書
課題番号 :S-20-NU-0034
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :ラマン分光を用いた放射線によるDNA損傷の解析
Program Title (English) :Analysis for DNA damage by radiations using Raman spectroscopy
利用者名(日本語) :平野 祥之
Username (English) :Y. Hirano
所属名(日本語) :医学系研究科 総合保健学専攻 バイオメディカルイメージング情報科学
Affiliation (English) :Department of Radiological and Medical Laboratory Sciences, Radiological Sciences
1.概要(Summary )
放射線が人体に与える影響のメカニズムの解明は、放射線影響や放射線治療の効果予測に重要である。放射線による細胞死の主な要因は、DNAの損傷と考えられており、損傷構造を知ることは修復可能性についての有用な情報であると考えた。損傷構造を知る方法として、NMRや質量分析、分光学的な方法が考えられるが、本研究ではラマン分光を利用した。DNA溶液にCo-60のガンマ線を照射して、非照射と比べてラマンスペクトルが変化するかを確認した。
2.実験(Experimental)
Thermo Fisherから購入したUltraPureTM Calf Thymus DNA溶液をマイクロチューブに10μLを入れ、名古屋大学コバルト60照射室で1173及び1333 keVのガンマ線で3kGy(3時間)照射した。その後、ステンレスプレートに滴下し、励起波長532nmのラマン分光装置を用いて、非照射と照射DNAサンプルのラマンスペクトルを観測した。それぞれ3点測定し、その平均スペクトルを算出した。ベースライン補正にGoldindecを用い、5cm-1のガウスフィルタをかけ、先行研究1)から照射によりラマンバンドに変化がないと考えられる1100cm-1のピークの高さで規格化した。
利用装置:レーザーラマン分光光度計(JASCO社製 NRS-1000)
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1にCo-60による照射、非照射のラマンスペクトル及びその差のスペクトルを示す。先行研究1)と同様な傾向が見られた。例えば1576 cm-1は照射により減少しているが、これはプリンのC4=C5、C4=N3の伸縮振動であり、塩基対のunstackingが原因と考えられている。また1485 cm-1の減少とバンドの広がりは、グアニンのRing mode N7に帰属し、オキソグアニンの生成による減少と考えられている。
本実験で、ラマン分光は、放射線照射によるDNA損傷の推定に有用であることが確認でき、今後は、粒子線や、線エネルギー付与を変えた場合、照射時の酸素濃度の変化、直接作用と間接作用の違いよるラマンスペクトルの変化について、系統的に調べる予定である。
図1 Co-60による3kGy照射と非照射のDNAのラマンスペクトルおよび差のスペクトル
4.その他・特記事項(Others)
1) J.Raman Spectrosc. 2007; 38: 1406–1415
本研究はJSPS科研費 JP12345678の助成を受けたものです。また名古屋大学コバルト60照射室の今井重文先生に照射を、分析・物質技術支援室 表面分析・形態観察技術グループ西村真弓先生にラマンスペクトルの測定をしていただき、深くお礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







