利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1083
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ラマン分光法による有機結晶のドミノ転移の分子ダイナミクスの研究
Program Title (English) :Molecular dynamics of domino transition of organic crystals studied
by Raman spectroscopy
利用者名(日本語) :関谷 博1), 網本 貴一2), 古川 一輝3), 尾原 萌華4), 水野 雄太4), 日野 和之4)
Username (English) :H. Sekiya1), K. Amimoto2), K. Furukawa3), M. Obara4), Y. Mizuno4), K. Hino4)
所属名(日本語) :1) 九州大学, 2) 広島大学大学院教育学研究科, 3) 日本大学文理学部,
4) 愛知教育大学教育学部
Affiliation (English) :1) Kyushu University, 2) Hiroshima University, 3) Nihon University,
4) Aichi University of Education
1.概要(Summary )
5-クロロサリチリデンアニリン(5CSA)の結晶は、機械的刺激によってα形(黄色)からβ形(橙色)へ転移する(図1)。このドミノ転移機構の解明を目的として、顕微ラマン分光法による研究を行った。α形とβ形のそれぞれに特有な振動バンドが観測された。機械的刺激による転移と比べて、光照射による転移は転移の開始を誘起できる。この利点を活かし、結晶の微小部分に紫外レーザー光を照射したところ、α形からβ形への転移が進行し、その転移に伴うスペクトル変化が観測された。
図1 5CSAの分子構造及びα形とβ形の結晶構造
2.実験(Experimental)
分子科学研究所機器分析センター設置の顕微ラマン分光装置RENISHAW inVia Reflexを用い、5CSAの二つの結晶多形のラマンスペクトルを測定した。このとき、5CSAからの蛍光バックグラウンドを除去するのに適した785 nm光を励起光源とした。α形結晶にレーザーポインター(405 nm)を光照射することによりα形からβ形への転移を誘起させた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図2に波数領域100-600 cm-1のα形結晶とβ形結晶の顕微ラマンスペクトルを示す。両者のスペクトルを比べ
図2 5CSAのα形とβ形のラマンスペクトル
ると、α形のスペクトルには120 cm-1と180 cm-1に、β形のスペクトルに観測されていない振動が現れている。他方、β形のスペクトルにも170 cm-1、460 cm-1のバンドなど、α形には観測されていない多数の振動バンドが観測されている。また、α形結晶に紫外光を照射すると、120 cm-1のバンドの強度が減少し、α形からβ形への転移が進行していることが示唆された。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







