利用報告書

ラマン分光法による電極触媒の結晶構造評価
古庄芳行, 天野史章
北九州市立大学大学院 国際環境工学研究科

課題番号 :S-19-MS-1048
利用形態 :装置利用
利用課題名(日本語) :ラマン分光法による電極触媒の結晶構造評価
Program Title (English) :Raman spectroscopy study of the crystal structure of electrocatalysts
利用者名(日本語) :古庄芳行, 天野史章
Username (English) :Y. Furusho, F. Amano
所属名(日本語) :北九州市立大学大学院 国際環境工学研究科
Affiliation (English) :Department of Chemical and Environmental Engineering, The University of Kitakyushu

1.概要(Summary )
太陽光を利用した光電気化学的な酸化還元反応により、水素のようなエネルギー物質を生成し貯蔵するための研究が広く行われている。これまでに、可視光応答性をもつp型半導体の酸化第一銅(Cu2O)が注目されてきた。Cu2O膜を導電性基板に電析させることによって光カソード電極を調製できる。しかし、基板が平板状であると、Cu2Oの膜厚と正孔の移動距離の関係により光カソード電極の高性能化に限界があった。高性能化には、光の吸収量を多くし、正孔の移動距離を短くする必要がある。そこで、高比表面積の3次元構造を有する導電性基材を用いることで上記の問題を解決することを試みた。

2.実験(Experimental)
Cu2O電極を電析法で作製した。導電性基材には、FTO被覆ガラス、チタン板、チタン繊維焼結体を用いた。電荷量0.5 C/cm2で電析した電極をCu2O/FTO sheet、Cu2O/Ti sheet、およびCu2O/Ti fiberと表記する。チタン繊維焼結体では、電荷量3.0 C/cm2でも電析した。この試料をCu2O(3.0)/Ti fiberと表記する。
ラマンスペクトルは、顕微分光システムinVia Reflex Raman(RENISHAW)を使用して室温にて取得した。レーザー波長は488 nmとした。

3.結果と考察(Results and Discussion)
チタン繊維焼結体を導電性基材に用いたCu2O/Ti fiber電極が高い光電変換効率を示すことがわかった。しかし、Cu2Oが薄膜であるためX線回折では結晶構造に関する知見を十分に得ることができなかった。そこで、ラマン分光法を用いて評価した(Fig. 1)。いすれの試料からもCu2O結晶に由来するピークが確認され、結晶構造には大きな違いがないことが分かった。

Fig. 1. Raman spectra of (a) Cu2O/FTO sheet, (b) Cu2O/Ti sheet, (c) Cu2O/Ti fiber, and (d) Cu2O(3.0)/Ti fiber.

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) F. Amano, A. Uchiyama, Y. Furusho, A. Shintani, “Effect of Conductive Substrate on the Photoelectrochemical Properties of Cu2O Film Electrodes for Methyl Viologen Reduction”, J. Photochem. Photobiol. A: Chemistry, Vol. 389, Article 112254 (2020).

6.関連特許(Patent)
なし

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