利用報告書

ラマン散乱光によるバイオ分析法の開発
金水縁, 谷口雄一, 大原祥子(理化学研究所 生命機能科学研究センター 細胞システム制御学研究チーム)

課題番号 :S-20-OS-0065
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ラマン散乱光によるバイオ分析法の開発
Program Title (English) :Development of bioanalytical methods using Raman scattering
利用者名(日本語) :金水縁, 谷口雄一, 大原祥子
Username (English) :S. Kim, Y. Taniguchi, S. Ohara
所属名(日本語) :理化学研究所 生命機能科学研究センター 細胞システム制御学研究チーム
Affiliation (English) :Laboratory for Cell Systems Control,
             RIKEN Center for Biosystems Dynamics Research

1.概要(Summary)
従来のバイオ分析法では吸光度、蛍光強度などの数値を測り、主に標的分子の定量分析が行われてきた。今回、大阪大学ナノテクノロジープラットフォームの装置を利用し、定性分析に特化したバイオ分析法の開発を目指して生体分子のラマン散乱光を測定した。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
S19 レーザーラマン顕微鏡

【実験方法】
タンパク質試料をガラス基板の上に乗せて、ラマン散乱のスペクトル測定を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
本研究では、微量のタンパク質のラマン散乱分析に最適な媒質、測定条件の探索を目的とした。媒質の候補として、trisバッファー水溶液(5 mg/ml)、タンパク質粉末、水溶液(5 mg/ml)を自然乾燥した試料、ハイドロゲル、金TEMグリッド基盤などを検討した。その結果、スライドガラス基板上に水溶液を乾燥した試料から最も鋭いラマン散乱スペクトルを得ることができた(Fig.1)。また、バッファー水溶液とタンパク質粉末を用いてもFig. 1とほぼ同様のラマンスペクトルが得られた。ラマンスペクトルの評価は、BSAの場合は約1000 cm-1でのphenylalanineのピーク、 Myoglobinの場合は1300-1700 cm-1でのhemeと周辺残基由来のピークを参考にした。
一方、ハイドロゲル内や金TEMグリッド上では、3種類のタンパク質(BSA, lysozyme, myoglobin)の間にラマンスペクトルの差が見られなかった。その理由として、信号を取得するための十分な量のタンパク質がゲル内・基板上に含まれていなかったことがあげられる。今後、㎍以下の生体分子試料を測定するためには、表面増強ラマン散乱現象の活用や適切な試料作製法の確立などが必要であると考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
装置使用方法に関してご説明頂きました大阪大学分子・物質合成PFの北島彰先生に感謝致します。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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