利用報告書

ラマン散乱分光法による薄膜界面の研究
村上俊也
株式会社東芝

課題番号 :S-17-NM-0070
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ラマン散乱分光法による薄膜界面の研究
Program Title (English) :Study on interface between thin films
利用者名(日本語) :村上俊也
Username (English) :T. Murakami
所属名(日本語) :株式会社東芝
Affiliation (English) :Toshiba Corporation

1.概要(Summary)
半導体デバイスは、種々の薄膜を積層して作製される。素子の特性は主に薄膜自身の物性による部分が多いが、素子の微細化に伴い薄膜界面の状態が強く影響してくる。たとえば、成膜時や熱処理における原子相互拡散や欠陥導入がある。このような変質した層の評価方法として、たとえばSIMSやXPS等で深さ方向にエッチングしながら元素濃度や結合状態を評価する手法があるが、加工による原子の押し込みや結合状態の変化が懸念される。そこで非破壊な評価方法が望まれる。ラマン散乱分光法では、透明基板であればプローブ光を基板の裏面側から界面に照射することで非破壊評価が可能となる。さらにプローブ光の波長を選択することで様々な基板に対応できる。本研究では、モデル基板として石英基板を用い、その上に金属薄膜を成膜して、金属-石英基板界面がどのように観察できるかを把握し、今後の薄膜界面の分析手法として適用可能かどうかを検討する。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】 
ラマン顕微鏡(支援者 竹村太郎)
【実験方法】
石英基板の表面側に金属を数十nm程度成膜し、不活性雰囲気下で熱処理した後、表面と裏面側からプローブ光を照射して、得られたラマンスペクトルを比較した。ラマン測定システムはナノフォトン社のRamanPlusを使用した。基板裏面からレーザーを照射するため、通常の対物レンズではワーキングディスタンス(WD)が短く焦点が合う前に対物レンズが試料に衝突してしまう。今回使用した石英基板の厚みは0.5-2mmなので、WDが4.5mmの長作動レンズ(倍率は20倍)を使用した。プローブ光には532nmのレーザを用いた。レーザパワーは5mW程度、スポット径は数μm程度、露光時間は10-60秒程度として測定を実施した。

Fig.1 Raman spectra
3.結果と考察 (Results and Discussion)
Fig.1に基板の表面側と裏面側から測定した金属層のラマンスペクトルを示す。表面側から測定したスペクトルには(Fig.1(a))、明確な信号が得られなかったが、裏面側から測定した場合(Fig.1(b))、490, 600, 815, 1060cm-1付近に基板由来のピークが確認された(*で示したピークは計測システムや周囲の蛍光灯等による信号)。レーザが基板内を通過する際に基板を励起したためである。今回用いた試料は金属酸化層等の信号は得られなかったが、表面側から基板由来の信号が得られていないことから基板表面側からは金属表面、基板裏面側からは金属-基板界面を選択的に評価していると考えられる。また、基板の裏面側からのレーザ照射で膜界面分析を行う場合は基板の信号を除去することでより詳細な解析が可能となる。よって裏面側からのラマン評価は薄膜界面の分析手法として有用であるといえ、今後各種金属や半導体薄膜の界面評価を進めていく。
4.その他・特記事項(Others) なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation) なし
6.関連特許(Patent) なし

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