利用報告書

リプログラミングにおけるエピジェネティック制御機構の解析
西村 健
筑波大学医学医療系

課題番号 :S-19-NM-0004
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :リプログラミングにおけるエピジェネティック制御機構の解析
Program Title (English) :Epigenetic regulation in retrovirus silencing during reprogramming
利用者名(日本語) :西村 健
Username (English) :Ken Nishimura
所属名(日本語) :筑波大学医学医療系
Affiliation (English) :University of Tsukuba, Faculty of Medicine

1.概要(Summary )
iPS細胞誘導時には、多能性維持・誘導に関係する遺伝子の発現が、様々なエピジェネティックな制御機構によって上昇する。我々は、多能性維持・誘導に関わる遺伝子のうち、Nanog遺伝子の発現誘導機構を解析するために、ES細胞においてNanog遺伝子のプロモーター領域に結合しているタンパク質の同定を試みた。そのために、特定のDNAに結合しているタンパク質やDNA、RNAの分離が可能な、CAPTURE system (Liu et al. Cell, 2017)を利用する。このsystemでは、解析対象となるゲノムDNAの近傍に結合するガイドRNAを設計し、ガイドRNAとdCas9タンパク質を細胞に導入する。そして、cross-link後にdCas9タンパク質を回収することにより、標的とするゲノムDNAに結合するタンパク質を分離することを可能にする。
そこでまず、Nanog遺伝子プロモーター領域に対して、ガイドRNAをデザインする。そして、そのガイドRNAを用いて、CAPTURE systemで、ES細胞のNanog遺伝子プロモーター近辺に結合するタンパク質を回収した。得られたタンパク質を同定するために、LC/MS/MSを用いた質量分析を行った。

2.実験(Experimental)
タンパク質複合体に対して、DTTによる還元処理、IAAによるシステインのカルバミドメチル化を行なった後に、Trypsin切断を行った。そして、断片化されたペプチドをC-TIPを用いて精製し、最終的にTFA_Aに溶解させた。次に、精製したペプチド断片を、分子・物質合成プラットフォームのLC/MS/MS機(LC: Nano-Advance (BRUKER), MS: Q Exactive Plus (Thermo))を用いて質量分析した。得られたスペクトルの解析には、Mascot server (MATRIX Science)を用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
質量分析の結果、ES細胞に対して、Nanog遺伝子プロモーターに結合するガイドRNAを用いたサンプルから、541個のタンパク質が同定された。それに対し、ガイドRNAを加えないサンプルからは427個、線維芽細胞のサンプルからは121個のタンパク質が同定された。これらの同定されたタンパク質を比較することによって、Nanog遺伝子プロモーターに結合すると考えられる候補タンパク質を数十個同定した。
その後、いくつかの候補タンパク質に対して、shRNAによる発現抑制をES細胞で行ったところ、現在までにES細胞の多能性、分化能に変化が起きるタンパク質をいくつか同定している。

4.その他・特記事項(Others)
LC/MS/MS機器の使用や前処理、データの解析について技術指導して頂きました、分子・物質合成プラットフォームの服部晋也様には大変お世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
Bui PL, Nishimura K, M Gonsalo S, Kumar BA, Aizawa S, Murano K, Nagata K, Hayashi Y, Fukuda A, Onuma Y, Ito Y, Nakanishi M, Hisatake K; Template Activating Factor-I Regulates Retroviral Silencing during Reprogramming. Cell Rep., Vol.29(7), 1909-1922, 2019

6.関連特許(Patent)
なし

©2026 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.