利用報告書
課題番号 :S-16-KU-0019
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :リポソーム空間による金属錯体の機能制御
Program Title (English) :Function control of metal complexes by liposome
利用者名(日本語) :越山 友美, 大場 正昭
Username (English) :Tomomi Koshiyama, Masaaki Ohba
所属名(日本語) :九州大学大学院理学研究院
Affiliation (English) :Faculty of Science, Kyushu University
1.概要(Summary )
天然の光合成システムでは、光捕集・電子移動・酸化反応・還元反応といった異なる反応を担う機能性分子群が協同的に働くことで高効率な光反応を実現している。このような機能連動を人工的に達成するためには、個々の機能性分子の分子密度・配置の制御が必要不可欠である。そこで、我々は機能性分子の密度・配置を制御するための分子集積場として、球状のリン脂質二分子膜であるリポソームのドメイン構造に着目した。飽和リン脂質、不飽和リン脂質、コレステロールから調製されたリポソームは、相分離によって特定の脂質が集まったLdドメインとLoドメインを形成する点を利用し、本研究では、Ldドメインへエネルギー供与体と受容体を固定化し、ドメインサイズによる蛍光共鳴エネルギー移動反応 (FRET) の制御を目指した(下図)。
2.実験(Experimental)
エネルギー供与体には不飽和リン脂質DOPEの親水部分にフルオレセインを修飾した蛍光分子 (Flu) を用いて、膜表面に配置した。エネルギー受容体には亜鉛ポルフィリン錯体 (ZnP) を用い膜内部の疎水領域に固定化した。ゼータサイザーゼータ電位・粒子径・分子量測定装置と用いて、リポソームの粒径サイズを決定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
顕微鏡観察によってFlu 、および ZnPが設計通りLdドメインに集積化していることを確認した。Flu/ZnPリポソームの蛍光スペクトルでは、Flu由来の蛍光強度の減少とZnP由来の蛍光強度の増加が観測され、Ldドメインにおいて膜表面のFluから膜内部のZnPへのFRETが進行することを確認した。さらに、FRET効率はエネルギー供与体と受容体間の距離に大きく依存することから、ドメインサイズによりドメインあたりのFluとZnPの分子密度を変化させることでFRET効率の制御を検討した。飽和、および不飽和リン脂質、コレステロールの比を変えることで、リポソーム全体がLdドメインであるFlu/ZnPリポソームと、リポソームの半分がLdドメインであるFlu/ZnPリポソームを作成し、リポソームあたりのFluとZnPの濃度を等しくしてFRET効率を比較したところ、Ldドメインを小さくすることでFRET効率は約1.5倍向上した。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Hatae, T. Koshiyama and M. Ohba, Chem. Lett., 2017, in press.
(2) ○越山友美、波多江達、大場 正昭、日本化学会第97春季年会、平成29年3月17日
(3) ○越山友美、波多江達、神田奈央、小金丸莉菜、三宅恭平、大場正昭、錯体化学会第66回討論会、平成28年9月11日
6.関連特許(Patent)
なし。