利用報告書

ループ型光量子プロセッサのためのプログラマブルタイミング制御器の開発
武田俊太郎
東京大学大学院工学系研究科

課題番号 :S-17-MS-3004
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ループ型光量子プロセッサのためのプログラマブルタイミング制御器の開発
Program Title (English) :Development of a programmable timing controller for a loop-based photonic quantum processor
利用者名(日本語) :武田俊太郎
Username (English) :S. Takeda
所属名(日本語) :東京大学大学院工学系研究科
Affiliation (English) :School of Engineering, The University of Tokyo

1.概要(Summary)
利用者は現在、JSTさきがけのプロジェクトとして「プログラマブルなループ型光量子プロセッサの開発」を進めています。この研究の目的は、現代のコンピュータよりもはるかに高い計算能力を持つ量子コンピュータを、下図のループ型の光回路を用いて実現することです。この光回路では、50ns程度の間隔で並べた多数の光パルスがループ内を繰り返し周回している間に、光スイッチ・ミラー透過率・位相シフト量などのパラメータを時々刻々と切り替えることで、計算処理を行います。全ての光デバイスを同期させながら制御するため、ナノ秒精度でプログラマブルに定義したトリガー信号を、同期しながら多数(最大20チャンネル程度)出力するタイミング制御器が必要です。市販品では多数のチャンネル数・自由度の高いパルスパターンの出力が難しいため、独自にタイミング制御器を開発することにしました。

2.実験(Experimental)
分子科学研究所装置開発室の豊田朋範氏と協力し、10ns程度の分解能でプログラマブルに定義したデジタル信号を、相互のジッターなく20チャンネル程度同時に出力できる装置を、FPGAを用いて開発します。始めに、市販のFPGAボードBASYS3を用いてプログラムの設計方針の検討および簡単な動作テストを行いました。次に、入出力チャネル数10程度の試作回路の製作へ移りました。装置開発室のソフトウェアおよびプリント基板加工機を利用し、FPGAモジュールCmod A7を利用した試作回路を設計・製作しました。この回路では、各種光デバイスとの相性を考え、FPGAモジュールの3.3Vの入出力をICを用いて5Vへと変換しています。更に、FPGAをクロック周波数100MHzで動作させ、10ns刻みで多チャンネルの出力パルスパターンを自由に出力できるよう、プログラムを準備しました。

3.結果と考察(Results and Discussion)
試作回路単体での動作テストの結果、期待通り、10ns刻みで自由に設定したパターンの信号を出力できることが確認されました。動作が高速であるため、出力波形に多少の乱れが見られましたが、実用上はそれほど問題にならないレベルだと考えられます。今後、この試作回路を東大にある光デバイスと組み合わせて動作テストを行います。このテスト結果をもとに、プログラム・回路設計の改善及びチャンネル数の増大を図り、要求仕様を満たす最終版を完成させる予定です。

4.その他・特記事項(Others)
参考文献:S. Takeda and A. Furusawa, Physical Review Letters 119, 120504 (2017)

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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