利用報告書
課題番号 :S-15-OS-0049
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :レーザーラマン顕微鏡を用いた小惑星イトカワ微粒子表面の炭素物質の探索
Program Title (English) :Search for carbonaceous materials from the surface of asteroid Itokawa particles by laser-Raman microscopy
利用者名(日本語) :薮田ひかる1)
Username (English) :H. Yabuta1)
所属名(日本語) :1) 広島大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :1) Department of Earth and Space Systems Science, Hiroshima University
1.概要(Summary)
我が国の小惑星サンプルリターン探査機「はやぶさ」が持ち帰ったイトカワ微粒子の地上分析から多くの岩石鉱物学、同位体宇宙化学的知見が得られている(e.g., Tsuchiyama et al. 2011; Nakamura et al. 2011; Noguchi et al. 2011; Nagao et al. 2011; Ebihara et al. 2011; Yurimoto et al. 2011)。他方で、イトカワ微粒子から有機物は検出されていない。イトカワに対応するといわれる普通コンドライト隕石の元素・同位体分析研究からは、一般に、初期太陽系に形成された有機物が含まれることが知られる(Alexander et al. 2007)。したがって、イトカワの母天体が800℃の熱変成史を経験しているとはいえ、超微量でも炭素物質(有機物)が含まれている可能性は否定できない。そこで本研究では、微量な炭素をその場分析できる顕微ラマン分光を用いて小惑星イトカワ微粒子から炭素を検出するための試験分析として、まずはイトカワ模擬物質として普通コンドライト隕石の顕微ラマン分光測定を行った。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
S19 レーザーラマン顕微鏡(RAMANtouch VIS-NIR、ナノフォトン株式会社)
【実験方法】
試料にはSemarkona普通コンドライト隕石(LL3.0)の粉末試料を用いた。隕石粉末の微粒子をスライドグラスにのせた状態で、顕微ラマン分光分析を行った。装置はレーザーラマン顕微鏡(RAMANtouch VIS-NIR、ナノフォトン株式会社)を用いた。レーザー波長532 nm、出力0.5, 1, 5 mWを用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Semarkona隕石の微粒子からはいずれも、炭素物質に由来するDバンド(約1355 cm-1)とGバンド(約1581 cm-1)が検出された。したがって、顕微ラマンは試料中含有量が0.4%の炭素を検出可能であることを確認することができた。ただし、今回実施した測定条件はやや強めであったので(図)、試料中の炭素の変性を抑えるためにはより穏やかな条件で測定を行う必要がある。また、小惑星イトカワは普通コンドライトの中でも熱変成の進んだLL6グループに対応づけられていることから、Semarkona隕石よりも炭素含有量が極少である可能性が想定され、レーザーラマン顕微鏡よりも空間分解能が高い分析装置の必要性も考えられた。
(a) (b)
(c)
4.その他・特記事項(Others)
本研究では、大阪大学ナノテクノロジー設備供用拠点のレーザーラマン顕微鏡を使わせて頂いた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし