利用報告書

レーザ加工のための材料の非線形吸収特性評価
溝尻瑞枝1)
1) 名古屋大学大学大学院工学研究科

課題番号 :S-16-NI-34
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :レーザ加工のための材料の非線形吸収特性評価
Program Title (English) :Nonlinear optical properties of materials for laser processing
利用者名(日本語) :溝尻瑞枝1)
Username (English) :M. Mizoshiri1)
所属名(日本語) :1) 名古屋大学大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Engineering、Nagoya University

1.概要(Summary )
本研究では,非線形光学効果を利用したレーザ加工を目的とし,基礎特性としてCuイオン溶液の非線形吸収特性を評価した.波長532 nmにおいて,非線形性を有することが明らかになった.
2.実験(Experimental)
Cuイオン溶液として,Cu(NO3)2・2.5H2O,ポリビニルピロリドン,エタノール,イオン交換水の混合溶液を用いた.本溶液を,厚さ1 mmの石英セルに充填し,Z-scan法にて,波長532 nmにおける非線形吸収特性を評価した.
レーザは,パルス幅10 ns,最大パルスエネルギー4.03 µJとし,NDフィルタ(OD:2.5~1.5)を用いて入射パルスエネルギーを変更した.レーザパルスは,レンズで集光して石英セルに照射した.透過率プロファイルのフィッティングから,レーリー長を見積り,更にその値からビーム径を見積もった.このビーム径,入射パルスエネルギー,パルス幅の値を用いて,入射強度を算出した.
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に,透過率と集光スポット位置との関係を示す.
入射エネルギーがそれぞれ,12.7 nJ,40.3 nJのとき,焦点位置が石英セル中央に位置する点で最も透過率が低下し,その点から離れるに従って反射率が1に近づく傾向が得られた.そこで,この2条件を用いてフィッティングを行い,レーリー長は約0.5 mm,ビーム半径は約10 µmと見積もった.この値を用いて,異なる入射エネルギー4条件について,入射強度を算出した.
一方,高入射強度の条件においては,必ずしも焦点近傍で透過率が最小とならなかった.Cuナノ粒子分散ガラスにおいては,これまでに可飽和吸収及び逆化飽和吸収について,入射強度に依存した特性評価報告があり,局在プラズモン共鳴に起因するものであると考えられている[1].本実験では,用いたCuイオン溶液にはナノ粒子が分散されてはいないが,測定時に高強度のレーザ照射により,ナノ粒子が析出した可能性もあり,これに起因した非線形光吸収特性を測定した可能性がある.

4.その他・特記事項(Others)
(謝辞)
本研究は,名古屋工業大学濱中泰先生にZ-scan法の測定をしていただきました.心より感謝申し上げます.また本研究は,科学研究費補助金若手研究(A)(課題番号16H06064)の支援を受けて実施しました.
(参考文献)
[1] R. A. Gannev, A. I. Ryasnyansky, A. L. Stepanov, and T. Usmonov, Phys. Stt. Sol. (b) 241 (2001) R1-R4.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし.
6.関連特許(Patent)
なし.

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