利用報告書
課題番号 :S-18-MS-1064b
利用形態 :施設利用(ナノテクプラットフォーム)
利用課題名(日本語) :一酸化窒素を選択的に捕捉するコバルト(III)錯体の反応挙動
Program Title (English) :Reaction Behavior of Co(III) Complexes with Selective Binding Ability for NO
利用者名(日本語) :増田 秀樹1), 山口 瑛名2), 余村 駿介2)
Username (English) :H. Masuda,1) E. Yamaguchi,2) S. Yomura2)
所属名(日本語) :1) 名古屋工業大学ナノ材料・機能分子創製研究所, 2) 名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Nagoya Institute of Technology, 2) Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
一酸化窒素(NO)は、生体内において血管拡張作用や免疫作用等に関わる重要な生理作用を持つ小分子である。そのため、NOを薬として機能させる研究が進んでいる。しかし、NO分子はラジカル分子であるため非常に不安定である。そこで本研究ではNOドナー性を有する金属錯体の開発に取り組んできた。今回、−4価という強い負電荷を中心金属へ押し込むN4型配位子のコバルト錯体を合成し、NOと反応させたところ、分光化学的にNOの配位が確認された。この時にできたCo-NO錯体の電子状態および反応性を解明するために、その電子スピン共鳴及び磁化率測定を行った。
2.実験(Experimental)
合成したCo錯体の結晶構造が得られており、その酸化数はCo(III)であると考えられた。しかし、NOが配位することで、NOが有する不対電子が錯体全体に非局在化するため、NOが配位した錯体の電子状態を明らかにする必要がある。そのため、この錯体のESR及び磁化率測定を行った。使用した装置は、ESR測定はBruker/EMX E500、磁化率測定はQuantum Design/SQUID MPMS-XL7で、それぞれ4Kから室温まで測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Co錯体の構造を右図に示す。実験項で記したように、この錯体の結晶構造は得られており、コバルトの酸化数は3価である。ここで、Co錯体の電子状態を検討するため磁化率を測定したところ、S=1の中間スピン状態にあるとが判明した。コバルト3価はd6であり、偶数個の電子を有するためESRスペクトルはsilentであった。そこで、NOと反応させESR測定を行ったところ、コバルト上に不対電子が存在するようなスペクトルが得られた。これは、NOが持つ不対電子がコバルト原子上へと流れ込み、Co(II)-NO+の電子状態となったか、もしくはコバルトの電子がNOへと流れ、Co(IV)-NO-の状態となったことを示唆するものである。別途、結合したNOのIRスペクトル測定に成功しており、NO-状態にあることが判明している。そのため、コバルトはCo(IV)状態にあると考えてられる。
4.その他・特記事項(Others)
(1) 山口瑛名CSJ優秀ポスター賞受賞(18th Nov. 2018)
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) ○山口瑛名・小澤智宏・猪股智彦・増田秀樹, 第28回金属の関与する生体関連反応シンポジウム(SRM2018), 2018年6月
(2) ○E. Yamaguchi, T. Inomata, T. Ozawa, H. Masuda, The 68th Conference of Japan Society of Coordination Chemistry, 29th. July 2018.
(3) ○山口瑛名・小澤智宏・猪股智彦・増田秀樹, 第8回CSJ化学フェスタ, 2018年10月
(4) ○H. Masuda (Keynote lecture), The 43rd International Conference on Coordination Chemistry, 30th July 2018.
(5) ○山口瑛名・小澤智宏・猪股智彦・増田秀樹, 第49回 中部化学関係学協会支部連合秋季大会 2018年11月
(6) ○山口瑛名・小澤智宏・猪股智彦・増田秀樹, 第99回春季年会 2018年3月
6.関連特許(Patent)
なし