利用報告書
課題番号 :S-16-JI-0025 NPS16012
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :不凍タンパク質の立体構造およびダイナミクス解析
Program Title (English) :Structural and dynamic analysis of the antifreeze protein
利用者名(日本語) :廣瀬 光
Username (English) :Hikaru Hirose
所属名(日本語) :石川県立大学生物資源環境学部食品科学科
Affiliation (English) :Department of Food Science, Ishikawa Prefectural University
1.概要(Summary )
ピキア酵母発現系を用いて,13Cおよび15Nで標識されたワカサギ不凍タンパク質を調製し,二次元NMR測定をおこなった.このタンパク質はカルシウムイオンによって活性が制御されているが,NMRスペクトルの解析から,カルシウムイオンの結合および解離にともない,その立体構造が変化することがわかった.立体構造が変化する領域はカルシウムイオン結合部位に限定されることが示唆された.
2.実験(Experimental)
NMR測定は,北陸先端科学技術大学院大学に設置されている800MHz NMR装置を使用し,1H-15N HSQC 二次元スペクトル測定をおこなった.
3.結果と考察(Results and Discussion)
ワカサギ由来不凍タンパク質(jsAFP)の遺伝子をピキア酵母に導入した.BMGY培地でピキア酵母を増殖させたのち,培地を 15Nアンモニア水を含む合成培地に変更し,13Cメタノールを24時間ごとに添加することで,13Cおよび15Nで標識されたjsAFPを発現誘導した.
培地中に分泌されたjsAFPをNi-NTAアフィニティークロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーにより,精製した.目的タンパク質の純度はSDS-PAGEにより確認した.収量は280nmの紫外吸光により定量した.
jsAFPにカルシウムイオンを結合させた状態および結合させていない状態において,1H-15N HSQCスペクトルを測定し,両者を比較した(図1).HSQCスペクトル上には,アミノ酸残基数に相当する約120個の信号が観測された.このことは,この試料タンパク質が正しいフォールディングを形成していることを意味した.また,カルシウムイオンの有無で約20個の信号の化学シフトが変化した.このことは,jsAFPはカルシウム結合によりその立体構造が変化するが,その構造変化は分子全体に影響が及ぶのではなく,カルシウムイオン結合部位周辺に限定されると考えると,化学シフト変化の状況を説明できる.
4.その他・特記事項(Others)
北陸先端科学技術大学院大学・大木進野教授より,試料調製およびNMR測定に関する技術的なご助言をいただきました.ここに感謝の意を表します.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 廣瀬光,津田栄,小椋賢治.ワカサギ不凍タンパク質の立体構造と機能の関係.第9回北陸合同バイオシンポジウム.2016年11月.福井県あわら市.
6.関連特許(Patent)
なし
図1.jsAFPの1H-15N HSQCスペクトル.
(青)カルシウムイオン結合状態,(赤)非結合状態.







