利用報告書

中枢神経系における微小核の新規形成機構と機能の解明
矢野更紗1),鶴田文憲1)

課題番号                :S-20-NM-0027

利用形態                :技術代行

利用課題名(日本語)    :中枢神経系における微小核の新規形成機構と機能の解明

Program Title (English) :The assessment of the micronuclei released from neuron during developing cortex

利用者名(日本語)      :矢野更紗1),鶴田文憲1)

Username (English)     :S. Yano 1), F.Tsuruta1)

所属名(日本語)        :1) 筑波大学大学院生命環境科学研究科

Affiliation (English)   :1) Grad Sch of Life and Env Sci, University of Tsukuba

 

1.概要(Summary )

脳の正常な機能には、胎児期における緻密な神経回路の構築が重要である。脳の発生過程で、免疫担当細胞であるミクログリアが貪食やシナプスの刈り込みなどの機能を担い、正常な神経回路の構築に貢献する。ミクログリアの機能は、環境因子に応じて遺伝子発現の変化を伴って制御される。しかしながら、発生過程特異的なミクログリアの機能変化の分子メカニズムは明らかになっていない。本研究課題では、大脳皮質の神経細胞が移動する過程で微小核という異常な核様構造体が形成され、神経細胞の微小核がミクログリアに伝播し、形質を変化させることが見出された。以上の結果から、神経由来微小核が脳発達初期のミクログリアの機能を制御する新規メディエーターであることが示唆された。今年度は神経細胞から放出される微小核の構成因子の解析を目的として、in vitro系において神経細胞から分泌された微小核が含まれる画分のLC-MS/MSを行った。

2.実験(Experimental)

これまでに、神経細胞の培地上清に含まれる微小核形成誘導因子を同定するため、遠心分画法によって様々な分子量の画分を回収し、生化学的に微小核が含まれる画分を同定した。同定した条件で回収した微小核が含まれる画分をLC-MS/MS(Q-Exactive)で解析した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

神経から放出された微小核が含まれる画分を生化学的に解析したところ、大型細胞外小胞画分に核膜タ

 

ンパク質が含まれていることを見出した。この画分を

LC-MS/MS (Q-Exactive)で解析したところ、多くの細胞外小胞に関わるタンパク質、オルガネラに局在するタンパク質が同定され、Histoneなどの核タンパク質も含まれていた。このことから、微小核にクロマチン構造を維持する核タンパク質以外に、膜輸送をはじめとする多様なタンパク質が含まれていることを本課題において発見した。

 

4.その他・特記事項(Others)

NIMS服部晋也氏の支援を受けた。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

(1) 矢野更紗, 窪谷ひかり, 佐藤伴, 千葉智樹, 鶴田文憲,発達過程における微小核を介した神経細胞―ミクログリア間の情報伝播, 第43回神経科学学会, 2020年7月30日,オンライン.
(2) 矢野更紗, 窪谷ひかり, 佐藤伴, 千葉智樹, 鶴田文憲,発達過程における微小核を介した神経細胞―ミクログリア間の情報伝播, 第1回脳科学サロン, 2020年6月15日, オンライン(招待).


6.関連特許(Patent)

なし

 

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.