利用報告書

二次電池電極材料向け配位高分子の合成と評価
山田 鉄兵1)
1) 九州大学大学院工学研究院

課題番号 :S-15-KU-0004
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :二次電池電極材料向け配位高分子の合成と評価
Program Title (English) :Synthesis and property of metal–organic frameworks for electrode material of secondary battery
利用者名(日本語) :山田 鉄兵1)
Username (English) :T. Yamada1)
所属名(日本語) :1) 九州大学大学院工学研究院
Affiliation (English) :1) Faculty of Engineering, Kyushu University

1.概要(Summary )
スマートホンやノートパソコン、電気自動車などに使用されているリチウムイオン二次電池の高容量化のため、マグネシウムなどの多価金属二次電池が注目を集める。しかし多価金属イオンはクーロン相互作用が強いために電極への挿入および脱離反応が進みにくく、特に適した正極材料が無い。我々は多孔性配位高分子を二次電池向け正極材料に使用することを目指した。ナノテクPF利用については、配位高分子への充放電と電極への金属イオンの挿入・脱離反応を追いかけるため充放電に伴う配位高分子材料の構造変化を粉末X線回折測定により追跡することを目指した。

2.実験(Experimental)
二次電池用配位高分子として、MIL-101(Fe)およびMIL-100(Fe)に着目した。MIL-101およびMIL-100はG. Fereyらにより合成された配位高分子で、三価の金属イオンとテレフタル酸もしくはトリメシン酸からなる多孔性配位高分子である。金属イオンとして鉄イオンを用い、合成を行った。
得られた配位高分子の充放電特性はSolartron 1470Eにより行い、充放電特性を評価した。
得られた評価を元にIn-situ X線回折測定を行った。In-situ測定は、Rigaku社性の電池測定用アタッチメントを使用した。ベリリウム窓を有する電池アタッチメントに正極材料とカーボンおよびペースト材料を混合した正極材料を取り付け、負極にリチウム金属を用いてセルをグローブボックス内でくみ上げ、Rigaku Smart Labに取り付けた。電線をKeithley 2450に接続し、充放電を行いながら同時に粉末X線測定を行うセッティングを行った。まず充放電を行わず、正極材料のみでセルを組み、粉末X線回折測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
正極材料としてMIL-101(Fe)を用いて測定を行った結果、セルアタッチメントの接続部の陰に隠れて低角度側の回折ピークがまったく観測されないことがわかった。詳しく評価を行ったところ、15°付近までのピークは、セルアタッチメントの設計上回折を観測することが出来ないことがわかった。一方MIL-101(Fe)の回折ピークはとても弱く、2°~10°付近にしかピークを検出することが出来ないことがわかった。
そこでMIL-100(Fe)を用いて測定を行った。

4.その他・特記事項(Others)
配位高分子(Porous coordination polymers もしくは Metal–organic frameworks):金属イオンと架橋配位子からなる3次元構造を有する金属錯体。一部の配位高分子は2nm以下の小さな孔(マイクロ孔)を有しており、極めて大きな比表面積を有する。そのため、ゼオライトや活性炭に代わる新しい吸着材料として注目を集める。本研究ではこの細孔を利用してイオンの挿入・脱離を促進し、また金属錯体部位を利用して充放電機能を付与することを目指した。
本研究はNEDOの革新的革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING事業)の一環として行ったものである。この場を借りて御礼申し上げる。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Yamada, 12th International Conference on Materials Chemistry (MC12), 平成27年7月20日
(2) T. Yamada, Pacifichem2015, 平成27年12月20日
(3) 白石 寛治、山田 鉄兵、君塚 信夫、日本化学会第96回春季年会、平成28年3月25日
6.関連特許(Patent)
なし。

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