利用報告書

二硫化モリブデンを用いた電気二重層トランジスタ/超伝導体接合の開発
津村 公平
東京理科大学理学部第一部応用物理学科

課題番号 :S-16-NM-0015
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :二硫化モリブデンを用いた電気二重層トランジスタ/超伝導体接合の開発
Program Title (English) :Development of a MoS2-based EDLT/superconductor junction
利用者名(日本語) :津村 公平
Username (English) :K. Tsumura
所属名(日本語) :東京理科大学理学部第一部応用物理学科
Affiliation (English) :Department of Applied Physics, Faculty of Sciecne, Tokyo University of Science

1.概要(Summary)
二硫化モリブデン(MoS2)は遷移金属ダイカルコゲナイド系層状物質の一つで、化学ドープによって超伝導状態を誘起できることが知られていた。最近、イオン液体を用いて電気二重層トランジスタ(EDLT)を形成し、MoS2に高濃度キャリアドープをすると、化学ドープ同様に電界効果によっても超伝導状態が誘起できることが示された。この電界効果誘起超伝導状態は非従来型超伝導状態であると言われているが、その検証は未だに行われていない。このような未知の超伝導状態の検証には、既知の超伝導体との接合構造が適している。本研究では、電界効果によって誘起されたMoS2の超伝導状態検証を目指し、MoS2-EDLT/従来型超伝導体接合の開発を行った。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
 レーザーRaman顕微鏡(受けた支援:装置の取り扱い説明とトラブル対応)
【実験方法】
NIMS微細加工プラットフォームのクリーンルームにてSi基板上にMoS2を劈開し、NIMS分子・物質合成プラットフォームのレーザーRaman顕微鏡を用いてRamanスペクトルを測定した。試料作製はNIMS微細加工プラットフォームにて実施した。Figure 1に作製した試料の模式図を示す。Ramanスペクトルから単層であると確認したMoS2薄膜に対してエッチングや超伝導電極(アルミ)作製などの微細加工を施し、最後にMoS2チャネル上にイオン液体DEME-TFSIを滴下した。

3.結果と考察 (Results and Discussion)
Figure 2は本研究で用いたMoS2薄膜のRamanスペクトルである。E2gとA1gとラベルした2つのRamanピークエネルギー差から、MoS2は単層であることがわかる。イオン液体に対してゲート電圧を6.0 V印加するとソース–ドレイン電流が約400倍増加し、MoS2-EDLTが形成されたことを確認した。図3は超伝導体/MoS2-EDLT/超伝導体接合の温度T = 18 mKにおける電流-電圧(IV)特性である。ゼロ電圧で電流が流れ、MoS2-EDLTを介して流れる超伝導電流を観測した。今後は本超伝導接合を用いて、MoS2の電界効果超伝導状態を検証する予定である。

4.その他・特記事項(Others)
NIMS微細加工プラットフォームにて微細加工を行い、筑波大学微細加工プラットフォームにて配線を行った。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 津村ら、第64回応用物理学会春季学術講演会、平成29年3月16日.
(2) 相川ら、日本物理学会第72回年次大会、平成29年3月17日.
6.関連特許(Patent)
なし。

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