利用報告書
課題番号 :S-20-MS-1041
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :亜鉛コバルトフェライトの薄膜およびナノ粒子における強磁性に関する研究
Program Title (English) :Ferromagnetism of Zinc ferrite film and nanoparticles
利用者名(日本語) :新海圭亮、大口恭平、安達信泰
Username (English) :K. Shinkai, K. Oguchi, N. Adachi
所属名(日本語) :名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター
Affiliation (English) :Advanced Ceramics Reserch Center
1.概要(Summary )
可視光領域に透過性のあるZnFe2O4結晶は、反強磁性を示すことで知られているが、有機金属分解法で作製したZnFe2O4は、結晶化条件により強磁性を示す。強磁性の原因として、八面体位置にあるFe3+の一部が四面体位置のZn2+と置換することでフェリ磁性が発現することとして考えられるが、この置換率を制御することで飽和磁化を大きくし、磁気光学結晶としての応用が期待できる。我々は、様々な熱処理でZnFe2O4を作製し、最大の磁化を得るための温度条件について探索した最適条件を探索するとともに、コバルト時間による磁気異方性の制御を試みた。
2.実験(Experimental)
薄膜は、有機金属分解法を用いて、シリカガラス基板上にスピンコーティングし作製した。溶液滴下後は、100℃で乾燥し、300℃で仮熱処理を行った。必要な膜厚までこの工程を繰り返した後、熱処理結晶化させた。焼成温度が強磁性の発現に与える影響を調べるため、焼成時間を1時間、焼成温度を480℃から600℃で変化させてそれぞれ作製した。作製した試料に対し、XRDによる結晶の評価、FE-SEMによる微構造観察、SQUID磁化測定、透過率測定、ファラデー効果測定を行った。EDSによる組成分析、SQUIDよる磁気特性の評価を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
膜厚はFE-SEMの断面観察により330nm程度であった。結晶化した薄膜は、ZnFe2O4単相のスピネル型構造を示す多結晶回折ピークのみが観測された。温度4Kでの磁化曲線は、どの試料においても保磁力は700Oe程度であり、磁気特性は同じ磁性相に由来すると考えられる。10kOeの印加磁界において、495℃_1hでは34.1emu/g、500℃_2hでは44.5emu/gの磁化を示した。また、480℃_12hでは37.2emu/gの磁化を示したことから、大きな磁化を示す焼成条件は、焼成温度500℃付近・焼成時間2h程度から焼成温度480℃付近・焼成時間12h程度の間にあると考えられる。アロットプロットからキュリー温度を190K程度と見積もった。80 Kにおけるファラデー回転は、膜厚当たりに換算すると、470nmで、-1.8×103 deg/cmを示し、短波長領域で比較的大きなファラデー効果を示すことが分かった。Co置換膜に関しては、置換量とともに保磁力が増大し、x=0.5から1.0付近にHc=3000 Oe程度の大きなピークを示したのち減少する振る舞いを示した。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 新海圭亮・中田勇輔・安達信泰, 日本セラミックス協会 第33回秋季シンポジウム, 平成2年9月2日.
(2) 安達信泰・新海圭亮・中田勇輔, 第44 回日本磁気学会学術講演会, 平成2年12月15日
(3) Shinkai Keisuks, Yusuke, Nakata, Nobuyasu Adachi, MRM Forum 2020, 平成2年12月8日
(4) 安達信泰・新海圭亮・中田勇輔, 日本セラミックス協会2021年年会, 平成3年3月23日
6.関連特許(Patent)
なし