利用報告書
課題番号 :S-16-NI-23
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :亜鉛ホウリン酸塩ガラスにおけるスズの価数評価
Program Title (English) :Estimation of valence state of tin in zinc borophosphate glasses
利用者名(日本語) :正井博和1), 大窪貴洋2), 柳田健之3), 壬生攻4)
Username (English) :H. Masai1), T. Ohkubo2), T. Yanagida2), K. Mibu3)
所属名(日本語) :1)京都大学, 2)千葉大学, 3)奈良先端科学技術大学院大学, 4)名古屋工業大学
Affiliation (English) :1) Kyoto University, 2) Chiba Univeristy, 3) Nara Institute of Science and
Technology, 3) Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
発光中心としてSnをドープした亜鉛ホウリン酸塩ガラスを作製し、メスバウアー測定より求めたSnの価数と、11Bおよび31P magic angle spinning (MAS) NMR測定より求めたガラス構造、および、蛍光特性との相関を調査した。その結果、Snは、相分離傾向のある亜鉛ホウリン酸塩ガラスネットワーク中に均一に分散していることが判った。
2.実験(Experimental)
母ガラスの基本組成を60ZnO-xB2O3-(40-x)P2O5 (mol%)に設定し、溶融急冷法により試料を作製した。まず、ZnO、B2O3、および (NH4)2HPO4 を800C で3 時間仮焼後、0.1 mol%のSnOを混合しAr 雰囲気中1100C で30 分間溶融し、透明なSnドープ60ZnO-xB2O3-(40-x) P2O5 (xSZBP)ガラスを得た。
得られた試料に対して、11Bおよび31P MAS NMRを測定し、それぞれのユニットの結合状態を評価した。また蛍光減衰特性を評価した。また、119Sn メスバウアー分光測定は、名工大にて透過法により実施し、Sn2+/ Sn4+比を算出した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
11B および31P MAS NMR測定の結果、BリッチZBP組成において、ネットワークを形成しないPO43-がP2O5分率の増加によって、ガラスネットワークを担うリン酸鎖ユニットに変化していることが明らかになった。また、PリッチZBP組成においては、ホウ酸ユニットは4配位状態として存在しており、B2O3量の増加によって、一部が3配位状態になることが判った。
これらガラス中におけるSnのメスバウアー測定を行った結果、図1に示すように、Sn2+/Sn4+比のみならず、アイソマーシフトおよび、4極子分裂も連続的に変化することが判った。このことは、ガラス中におけるスズ種が、相分離傾向のある亜鉛ホウリン酸塩ガラスにおいても、イオン性のリン酸塩ユニット周辺に局在しているのではなく、ガラスネットワーク中に均一に分散していることを示している。実際に、これらのガラスにおいてSn2+の蛍光特性は連続的に変化しており、メスバウアー測定の結果と良い一致を示している。
Fig. 1 119Sn Mössbauer spectra of xSZBP glasses.
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は、科研費若手(A) 26709048の支援を受けて実施された。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) H. Masai, S, Okumura, T. Ohkubo, and T. Yanagida, submitted.
6.関連特許(Patent)
なし