利用報告書

人工合成ダイヤモンドのフォトルミネッセンス測定
石川史太郎
愛媛大学大学院理工学研究科

題番号 :S-16-NI-01
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :人工合成ダイヤモンドのフォトルミネッセンス測定
Program Title (English) :Photoluminescence measurement of artificially synthesized diamond
利用者名(日本語) :石川史太郎
Username (English) :愛媛大学
所属名(日本語) :1) 愛媛大学大学院理工学研究科
Affiliation (English) :1)Ehime University

1.概要(Summary )
ダイヤモンドは物質中で最高の熱伝導度に加え、高い硬度、透明性、絶縁破壊電界電圧・移動度などの優れた半導体としての物性を併せ持つ。現在省エネルギー素子として大きく期待される電力変換パワー半導体デバイスは、家電から各種輸送機器に至るまで、その材料が従来のSiからより高性能なSiCやGaNへと置き換えられている。この中にあってダイヤモンドは、さらに将来の高性能パワーデバイスを実現する一つの候補として期待されている。愛媛大学では、超高圧発生装置によるナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)の合成や、その高品質化・大型化に成功している。同NPDの電子的特性の報告例は少なく、その応用可能性については正確な物性の把握が必要不可欠である。そこで今回は、高温・高圧合成NPDの光学特性についてフォトルミネッセンス(PL)法により調べた。

2.実験(Experimental)
NPDの合成は、キュービック型超高圧発生装置を用いて行った。出発物質には市販の高純度グラファイトを用い、合成条件は15GPa、2300℃の圧力、温度を印加した。意図的な不純物導入は行っていない。合成されたダイヤに対して、PL測定を5Kから300Kの温度範囲で行った。PL測定における励起光源には、異なる2種の波長532nmおよび405nmの半導体レーザーを用いた。ディテクターには1024チャンネル電子冷却CCD(Andor Technology DV420)を用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig.1に、PL測定結果を示す。どちらの波長においても、幅の広いピークに多くの鋭いピークが重なったスペクトルが観測された。鋭いピークはどれも温度の上昇とともに発光強度が小さくなり、室温付近では大きくその強度が小さくなった。一方、幅の広いピークは室温まで明瞭に観測された。鋭いピークのピーク位置は非常に安定で、室温から5Kの低温までほぼ変化することがなかった。これらのピークの起源としては同結晶中に含まれる窒素などの不純物の存在による欠陥に起因することが考えられる。また、非常にピーク位置が温度に安定な光源としての可能性も示唆された。同試料に対してCL測定を行ったところ、2.8eVの位置にバンドAと呼ばれる強い支配的な発行が観測された。このピークは2eV付近まで大きな裾をひくものであったが、PL測定では同様の発光は観測されず、CLの高いエネルギーで励起された際の特徴的発光再結合であることが考えられた。

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) “Semi-conductive characteristics of nano-polycrystalline diamond synthesized by high pressure and high temperature technique”F. Ishikawa, A. Ishikawa, K. Hamada, M. Matsushita, International Conference on Diamond and Carbon Materials, September 4-8, 2016, Montpellier, France.
(2) 福田玲,石川晃啓,石川史太郎,松下正史,大藤弘明,新名亨,入舩徹男, 第64回応用物理学会春季学術講演会, 平成29年3月16日.

6.関連特許(Patent)
なし。

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