利用報告書

付着生物に対する抗付着材料合成の探索
室崎喬之(旭川医科大学 化学)

課題番号 :S-20-CT-0041
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :付着生物に対する抗付着材料合成の探索
Program Title (English) :Development of antifouling materials against sessile organisms
利用者名(日本語) :室崎喬之
Username (English) :MUROSAKi Takayuki
所属名(日本語) :旭川医科大学 化学
Affiliation (English) :Department of Chemistry, Asahikawa Medical University

1.概要(Summary )
 付着生物は海中の人工構造物表面に対し強い付着性を示すとともに、その表面を覆うように増殖する事から海運、電力などの分野では汚損生物として扱われている。トリブチルスズ(TBT)防汚塗料は付着生物に対し高い防汚性を発揮する事から過去に広く用いられてきたが、その高い毒性が明らかになった事で現在では使用が禁止されている。その為、環境負荷の低い防汚技術の研究開発が盛んに行われている。
 本申請課題では付着基質の硬さと付着生物の付着挙動に着目し、その付着・増殖挙動について観察を行った。

2.実験(Experimental)
付着基質には硬さの異なるポリジメチルシロキサン(PDMS)を、モデル付着生物には付着珪藻Navicula sp.を用いた。観察に用いた電子顕微鏡は、公立千歳科学技術大学・分子物質合成プラットフォームに設置されている電界放出形走査電子顕微鏡FE-SEM(日本電子社製 JSM-7800F)である。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 図1にPDMS上にて培養したNavicula sp.のSEM像を示す。付着経時変化の観察より、何れの硬さの表面においても珪藻が増殖する様子が確認された。今回の付着実験では付着基質の硬さと付着珪藻の個体数の間に相関性は見られなかったが、最も柔らかい付着基質(硬化剤:PDMS比率=1:50)の上において付着珪藻の一部が表面に埋没し付着している様子が観察された。今後ゲルなどのソフトマター表面でどのように増殖するか詳しく調べていく予定である。

図1 付着珪藻(Navicula sp.)の付着の様子

4.その他・特記事項(Others)
本研究の遂行にあたり、付着珪藻をご提供頂きました電力中央研究所の野方靖行先生、並びに電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM,日本電子社製 JSM-7800F)による観察を行って頂きました公立千歳科学技術大学の岸上大輝氏、平井悠司先生にこの場を借りて感謝の意を表します。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 渡邊純平, 三上恵, 室崎喬之, 野方靖行, 下村政嗣, 平井悠司,2021年度日本付着生物学会, 令和 3 年 3 月 23 日.
(2) 三上恵, 渡邊純平, 室崎喬之, 野方靖行, 下村政嗣, 平井悠司,2021年度日本付着生物学会, 令和 3 年 3 月 23 日.

6.関連特許(Patent)
なし

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