利用報告書
課題番号 :S-16-KU-0004
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :例外的に保存の良い化石の眼に残された化学物質の同定
Program Title (English) :Chemical identification of exceptionally preserved fossil eyes
利用者名(日本語) :田中 源吾
Username (English) :Gengo Tanaka
所属名(日本語) :熊本大学 合津マリンステーション
Affiliation (English) :Aitsu Marine Station, Kumamoto University.
1.概要(Summary )
例外的に軟組織が保存された眼について、化学的視点からもその存在の有無を確認し、眼の軟組織の化石化について検討する。今回は、上海科技館の周博士と共同研究中の白亜紀の絶滅鳥類の標本と、現生の鳥の眼の光感受器の特定の領域についての化学分析をおこない、オリジナルな化学成分が保存されているかどうか調査した。
2.実験(Experimental)
九州大学工学部の楊井先生の研究室のMALDI-TOFを使用させていただき、化石および現生の鳥の網膜表面の化学物質の同定を行った。まず、イオン化を助けるために検体(タンパク質)にDHBをまぜ,エタノールを混ぜ、MTB384 ground stageに溶けた溶液を滴化し、デシケーター内で乾燥させMALDI-TOF分析を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
分析結果は上の図の様になった。化石では、網膜表面に存在する高分子有機物は検出されなかった。しかしながら現生の鳥では、多数の高分子のピークが検出された。これらは今後各、高分子を単離して同定する必要がある。オプシンについては例えばウサギの眼で41677, 41655, 41735, 41670といったところにピークが確認されている。本研究でも現生の鳥の網膜において、41735にピークが見られ、これはおそらくオプシンであると考えられる。現在は、オプシン,クリスタリン等,眼や網膜の各組織を作る物質を単独に検出するような媒体を作成し、化石にそれらが保存されているかどうか検討中である。
4.その他・特記事項(Others)
本研究を進めるにあたって、周保春博士をはじめとする上海科技館の学芸員の皆様には、標本の採集に御協力いただいた。また、平成28年熊本地震に関して、研究施設を快く開放していただいた九州大学分子・物質合成プラットフォームの方々に感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







