利用報告書

修飾色素分子の開発とその評価
松井栄樹
福井工業高等専門学校 物質工学科

課題番号 :S-17-J1-0015
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :修飾色素分子の開発とその評価
Program Title (English) :Synthesis and evaluation of functional dye molecules
利用者名(日本語) :松井栄樹
Username (English) :E. Matsui
所属名(日本語) :福井工業高等専門学校 物質工学科
Affiliation (English) :National Institude of Technology, Fukui College

1.概要(Summary )
フタロシアニンとは青から緑色を呈する人工色素である.色素のうち,光,電場,熱,磁場といった外部刺激と相互作用することで新しい機能を創出する色素分子を機能性色素といい,光の時代を支えるとされる注目の材料である.
本研究では,ピラジン骨格を含むジシアノ体にヘテロ環を縮合して前駆体となるジシアノ体を合成した後,ヘテロ環が縮合した外部配位サイトを有するフタロシアニンの合成と同定を目的とした.
今回目的とするヘテロ環が縮合したフタロシアニンは,平面性が極めて高いため溶解性が低く,共役が伸びていることが特徴である.また,ヘテロ環部分が蛍光を持つことから蛍光測定による金属検出が可能になると考えられる.
MALDI測定を実施することで,中心にZn2+が入ったフタロシアニンの生成が明らかになった.

2.実験(Experimental)
合成したジシアノ体と1当量のZnQ2Cl2を200℃,N2気流下で11時間撹拌後,真空乾燥した.得られた粗結晶をDMSOに溶解した後にCH2Cl2を加えて静置,分離させ,CH2Cl2で濾過し,得られた結晶を真空乾燥後,MALDI測定により同定を行った.
MALDI測定はBruker社製 UltrafleXtremeを用いてDHBAをマトリックスとして使用し,20000回の積算を行った.

3.結果と考察(Results and Discussion)
これまでに類似の構造を有するフタロシアニンはESIではイオン化されないが,MALDIによるイオン化で同定が可能であった.
そこで同様の条件にて合成した2種類のフタロシアニンのMALDI測定を行ったところ,フタロシアニン1 (C44H17N24Zn)の質量944.13にH+ が付加した質量945.13に近い945.620とNa+ が付加した質量967.13に近い967.612という値が得られた.また,フタロシアニン2 (C60H49N24Zn)の質量1168.38にH+ が付加した質量1169.38に近い1170.942とNa+ が付加した質量1191.38に近い1191.931という値が得られ,目的とする構造のフタロシアニンの生成が明らかとなった.
 図 フタロシアニン1のMALDI測定結果

4.その他・特記事項(Others)
MALDI測定について,技術相談から機器利用までナノマテリアルテクノロジーセンター大坂一生博士,宮里朗夫博士の支援を受け実施した.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
「なし。」

6.関連特許(Patent)
「なし。」

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