利用報告書
課題番号 :S-15-MS-1069
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :光合成タンパク質間相互作用の機構解明
Program Title (English) :Study on the mechanism of thermostability and interactions between photosynthetic protein complexes
利用者名(日本語) :岡﨑航大1), 大友征宇2)
Username (English) :K. Okazaki1), S. Otomo2)
所属名(日本語) :1) 茨城大学大学院理工研究科, 2) 茨城大学理学部
Affiliation (English) :1) Graduate School of Science and Engineering, Ibaraki University, 2) Faculty of Science, Ibaraki University.
1.概要(Summary )
緑色植物で代表される光合成生物は太陽の光エネルギーを取り込み、光電変換と電子伝達を経て生物が利用可能な生体エネルギーに変換して二酸化炭素から有機化合物の合成を行う。これまでの研究により、電子伝達の過程において数多くのタンパク質が関与していることは判明されたが、その複雑な分子機構の詳細についてはまだ明らかになっていない。よく知られている例として光合成細菌の反応中心(RC)とそれに電子伝達を行うチトクロム(Cyt) c2の系が挙げあれる1,2。紅色硫黄光合成細菌の場合、Cyt c2の代わりに鉄硫黄タンパク質HiPIP(high potential iron-sulfur protein)が存在する種がある。RCは光合成膜に埋め込まれた色素膜タンパク質複合体であるのに対して、HiPIP(分子量約8700)は水溶性タンパク質である。両者の間に電子の授受が行われていることは分光学的に観測されたが、直接的な相互作用の存在はまだ証明されていない3。一方、マイクロカロリメトリーによる色素膜タンパク質複合体自身の熱安定性測定についてはごく僅かな例を除いて成功していない。本研究では、タンパク質間相互作用と熱耐性の検出に高感度の微量熱量分析装置を用いて、光合成細菌由来の電子伝達タンパク質間における特異的な分子認識機構と熱耐性機構の解明を目的とする。
2.実験(Experimental)
実験試料として好熱性紅色硫黄光合成細菌Tch. tepidum及びAlc. tepidum由来の光捕集反応中心複合体LH1-RCと、これに電子を供給するとされるHiPIP(Tch. tepidum)を用いた。微量熱量測定には分子研機器センターの等温滴定カロリメトリー(ITC)と示差走査型マイクロカロリメトリー(DSC)を用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Alc. tepidumより単離精製したLH1-RCのDSC測定において、多くの実験条件(試料濃度、界面活性剤の種類、塩の種類と濃度、バッファーの種類とpH等)をスクリーニングした結果、最適条件下で吸熱ピークが観測され、これはLH1-RCの変性温度と考えられる。
一方、Tch. tepidum由来のLH1-RCとHiPIPのITC測定には、多くの条件検索により添加塩の選択が重要であることが判明された。正確な相互作用の測定と評価には、今後引き続き添加塩濃度と溶液組成の最適条件を決める必要がある。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
1. N. Adir, H. L. Axelrod, P. Beroza, R. A. Isaacson, S. H. Rongey, M. Y. Okamura, G. Feher, Biochemistry 35, 2535(1996)
2. H. L. Axelrod, E. C. Abresch, M. Y. Okamura, A. P. Yeh, D. C. Rees, G. Feher, J. Mol. Biol. 319, 501(2003)
3. S. Ciurli, F. Musiani, Photosynth. Res. 85, 115(2005)
謝辞
測定には、神戸大学農学研究科の木村行宏博士と分子研機器センターの長尾春代さんのご協力を頂きました。本研究の一部は住友財団基礎科学研究助成を受けて行われた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







