利用報告書

光圧によるシトロクロムcのアミロイド線維形成
杉山輝樹1), 廣田俊2)
) 国立交通大学応用化学系, 2) 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科

課題番号 :S-17-NR-0045
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :光圧によるシトロクロムcのアミロイド線維形成
Program Title (English) :Formation of amyloid fibril formation of cytochrome c by optical trapping
利用者名(日本語) :杉山輝樹1), 廣田俊2)
Username (English) :T. Sugiyama1), S. Hirota2)
所属名(日本語) :) 国立交通大学応用化学系, 2) 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科
Affiliation (English) :1) Dep. Appl. Chem, NCTU, 2) Grad. Sch. Mat. Sci., NAIST

1.概要(Summary)
アミロイド線維の体内での沈着はアルツハイマー型認知症、パーキンソン病などさまざまな疾患の発症に強く関与している。これら疾患の治療や予防法を開発するには、アミロイド線維の生成メカニズムを理解することが不可欠である。しかしながら、アミロイド線維が生成する場所や時間を予知、特定することは非常に難しく、そのためアミロイド線維の生成メカニズムは未だ完全に明らかになっていない。一方、光(レーザー)を溶液中に急激に絞り込む(集光)と、光と溶液中の物質が相互作用し勾配力(光圧)が働き、1立方マイクロメートル程度の極小領域にその物質を集めることが可能である。本課題では、この光圧を利用して溶液中のタンパク質を局所的に集め、狙った場所、望む時間にアミロイド線維を人工的に作製することを目的とした。

2.実験(Experimental)
集光レーザーの光圧をシトクロムcの単量体及び2量体の溶液中に作用させ、アミロイド線維の凝集体を作製した。生成した凝集体にアミロイド線維に対して特異的に蛍光を発する色素チオフラビンTを加え、蛍光の増強を観察した。また、その凝集体を超音波処理によってほどき、アミロイドの線維構造を透過型電子顕微鏡によって観察した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
単量体の場合には、レーザー照射により比較的速く1ミクロン程度の透明な液滴を形成するが、引き続きレーザーを照射してもそれ以上大きく成長することはなかった。一方、2量体の場合には、レーザーの照射により単量体の場合と同様に液滴を形成した後、続けてレーザー照射すると、その液滴が徐々に大きくなり、最終的に10マイクロ程度の大きな凝集体が生成した。その凝集体からは、チオフラビンTの非常に強い蛍光が観察され(単量体及び2量体の初期に観察される透明な液滴からは蛍光は全く観察されない)、また透過型電子顕微鏡ではアミロイドに特徴的な線維構造が観察された(右図)。このように、光圧を駆使することでシトクロムcの2量体のアミロイド線維を非常に極微な1ミクロンの領域に人工的に作製することに成功し、さらに単量体より不安定な構造を持つ2量体の方が、アミロイド線維を形成しやすいことを実験実証した。

4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は、台湾科技部研究計画 (MOST 105-2113-M-492-001-)、JSPS科研費 JP16H06507(新学術領域研究「光圧ナノ物質操作」)、JSPS科研費 JSPS科研費 JP16H00839(新学術領域研究「柔らかな分子系」)の助成のもとで実施された。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K. Yuyama, M. Ueda, S. Nagao, S. Hirota,T. Sugiyama, and H. Masuhara, Angew. Chem. Int. Ed., Vol. 56 (2017) p.p.6739-6743.
(2) T. Sugiyama, 2017年光化学討論会, 平成29年9月4日.

6.関連特許(Patent)
なし

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