利用報告書

免疫調節活性を持つ複合脂質・糖質分子の構造解析
荒井洋平, 松丸尊紀, 藤本ゆかり
慶應義塾大学理工学部

課題番号 :S-19-MS-0040
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :免疫調節活性を持つ複合脂質・糖質分子の構造解析
Program Title (English) :Structure elucidation of immunomodulatory glyco- and lipid-complex
利用者名(日本語) :荒井洋平, 松丸尊紀, 藤本ゆかり
Username (English) :A. Arai, T. Matsunaru, Y. Fujimoto
所属名(日本語) :慶應義塾大学理工学部
Affiliation (English) : Faculty of Science and Technology, Keio University

1.概要(Summary )
免疫機構は生体分子間の複雑なネットワークにより調整されているが、申請者は免疫の制御機構の解明を目指し、その機能を制御する免疫調節性分子の探索・創製および機能解析を行っている。本研究では、特に免疫調節性分子として、微生物由来あるいは内因性のイノシトールリン脂質およびその糖付加体を目的構造としており、イノシトール環上の糖鎖部位およびリン酸部位の結合位置の解析を行うとともに、類似の糖部分構造を分子内に持つために構造解析の困難な糖構造を含む糖付加型のイノシトールリン脂質について、高磁場の溶液NMRを用い測定・解析を行うことを目的とした。

2.実験(Experimental)
高磁場NMR(溶液800 MHz)を用い、申請者らが合成した化合物に対し、糖のNMR 構造解析に多くの実績をもつ分子研の加藤晃一教授、谷中冴子助教らの協力のもと1H,13C, 31P による多核種NMR 計測、COSY, TOCSY, HMBC, HMQCなどの二次元NMR 計測を実施、構造解析を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
まず利用者らにより化学合成した結核菌由来あるいは内因性のイノシトールリン脂質およびその糖付加体について高磁場NMR(溶液800 MHz)を用いた解析を行った。一般に、糖あるいは関連化合物のNMR 解析においては、官能基の種類の乏しさによるシグナル縮重などの問題が避けられず、分子構造に応じた多次元NMR 計測を行う必要があるが、特に本研究の対象であった微生物由来イノシトールリン脂質については、化合物の調製に多段階の合成が必要なため化合物の希少性が高いこと、またシグナル縮重が見られたことから、通常の装置での解析が困難であった。本共同研究により、800MHz 溶液NMR を用いた1H, 13C, 31P による多核種NMR 計測、COSY, TOCSY, HMBC, HMQCなどの二次元NMR 計測を実施、解析し、イノシトールリン脂質類の構造決定に成功した。また構造が明らかとなった化合物については、免疫調節活性についての解析を行い、NMRの結果と併せて構造活性相関の解析に成功した。

4.その他・特記事項(Others)
本共同研究において高磁場NMR(溶液800 MHz)測定に際しご尽力頂いた、分子化学研究所 生命・錯体分子科学研究領域 生体分子機能研究部門/協奏分子システム研究センター 生体分子システム研究部門・加藤晃一教授、谷中冴子助教に感謝申し上げます。
また、本共同研究に用いた化合物の合成研究の一部は、科研費・基盤研究(B)JP17H02207,新学術領域研究 JP18H04426の助成を受けて行われたものです。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Y. Fujimoto, 日本化学会第100春季年会, 令和2年3月22日
(2) 大久保花菜、荒井洋平、松丸尊紀、藤本ゆかり, 日本化学会第100春季年会, 令和2年3月22日

6.関連特許(Patent)
なし。

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