利用報告書

六方晶フェライトにおけるスピン再配列転移
木全 祐介,浅香 透
名古屋工業大学

課題番号 :S-16-NI-20
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :六方晶フェライトにおけるスピン再配列転移
Program Title (English) :Spin-reorientation transition in the hexaferrites
利用者名(日本語) :木全 祐介,浅香 透
Username (English) :Yusuke Kimata, Toru Asaka
所属名(日本語) :名古屋工業大学
Affiliation (English) :Nagoya Institute of Technology

1.概要(Summary )
強誘電性と(反)強磁性を一つの系で併せ持つマルチフェロイックスをはじめとする電気磁気効果を発現する物質系が、エネルギー散逸が少なく高速応答が可能なデバイスへの応用が期待され盛んに研究がなされている。しかしながら、これらの系の多くは物性発現が低温かつ大きな磁場を要するなど問題があった。そのような中、最近、Z型六方晶フェライトにおいて、室温かつ低磁場での電気磁気効果の発現が見出された[1]。六方晶フェライトはいくつかの種類のブロック構造(サブユニット)の積層構造とみなすことができ、その積層様式により、M型やZ型のように分類される。上記の発見以降、様々な構造タイプの六方晶フェライトについて研究がなされ、多くの構造タイプの磁性と電気的特性が調べられ、電気磁気効果の発現も確認されている。しかしながら、X型六方晶フェライトについては電気磁気効果はもとより、基礎物性についての報告も少ない。そこで、我々はX型六方晶フェライトの磁性について調べている。本研究においては、高温でスピン再配列転移が見出された。

2.実験(Experimental)
試料はフラックス法により育成したX型六方晶フェライト単結晶を用いた。数mm角の単結晶試料に対して、名古屋工業大学設置の振動試料型磁力計を用いて、磁化の温度挙動を調べた。測定温度範囲は300 – 920 Kとし、印加磁場を50 Oeと100 Oeで測定を行った。これらの測定条件で結晶のc軸に平行な方向と垂直な方向での測定を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に磁場をc軸に平行と垂直に印加した場合の磁化の温度依存性を示した。300 – 350 Kでは磁化の値が異なるがそれ以上ではほぼ一致した挙動となった。いずれも370 K付近と750 K付近において、際立った変化が観測された。それぞれ、スピン再配列転移と強磁性―常磁性転移(キュリー点)をあらわしていると考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
【参考文献】
[1] Y. Kitagawa et al., Nature Mater. 9, 797 (2010).
【謝辞】本研究は名古屋工業大学 日原岳彦教授にご指導いただき遂行されました。日原教授に厚く御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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