利用報告書
課題番号 :S-16-NU-0017
利用形態 :依頼測定
利用課題名(日本語) :共役系骨格を有する折りたたみ高分子材料の構造解析
Program Title (English) :Structural analysis for folded polymer materials with conjugated units
利用者名(日本語) :櫻井 庸明
Username (English) :T. Sakurai
所属名(日本語) :京都大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Engineering, Kyoto University
1.概要(Summary)
セキシチオフェンとフェロセンからなる剛直性セグメントと屈曲性部を持つ高分子化合物(DT6Fe)を新規に合成し、折りたたみ構造の構造解析を行っている。本支援では、溶液から再沈によって得られたナノ粒子およびキャストフィルムのX線構造解析を行った。
2.実験(Experimental)
DT6Feのキャスト膜をクロロホルム溶液から調製した。また、DT6Feの希薄なクロロホルム溶液を激しく撹拌したアニソール溶媒中に注入し、ナノ粒子分散液を調製した(再沈法)。この分散液を乾燥し、粉末試料を得た。Rigaku FR-E/R-AXIS IVを使用し、X線散乱測定を行った。薄膜試料は、斜入射ステージを用いた斜入射X線散乱測定(GI-XRS)、粉末試料はマークチューブに封入し、透過法にてX線散乱(XRS)測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Figure 1にDT6Feキャスト膜のGI- XRS測定による2次元散乱像を示す。小角領域の面外方向に異方的な散乱ピークが観察され、面間隔3.7 nmに強い散乱が、2.7 nm、1.8 nmに弱い散乱が観察された。面間隔約2 ~4 nmの散乱は、長いアルキル鎖を持つ導電性高分子化合物のラメラ構造やヘキサゴナル構造の主鎖間距離に帰属される。よって、これらの散乱はDT6Feの分子組織構造由来の散乱と考えられる。一方、広角側には、面間隔約0.4 nmに相当する共役ユニット平面の重なり構造(πスタック)由来の散乱が全く観察されず、折りたたみ構造に関する知見は得られなかった。
再沈法にて得られたナノ粒子の粉末試料を測定した結果をFigure 2に示す。広角領域の2θ = 21.3o (0.41 nm)にシャープなピークが観察された。このピークは、セキシチオフェンユニット由来のπスタック構造に帰属され、折りたたみ構造由来の散乱と期待される。これは、比較的希薄溶液を貧溶媒に注入してナノ粒子が得られているため、1分子鎖に近い状態にて集合構造を形成したものと考察できる。今後、ナノ粒子分散液から薄膜を調製し、分子異方性をGI-XRSにて検討する予定である。
Figure 1. A 2D GI-XRD image (top) and 1D out-of-plane and in-plane intensity profiles (bottom) for a DT6Fe cast film.
Figure 2. A XRD pattern for DT6Fe nanoparticle powder.
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 櫻井庸明, 辻本諭輝, 関 修平「多関節高分子の設計・合成とその特異な自己組織化」 2016年日本液晶学会討論会, 大阪工業大学大宮キャンパス, 2016年9月5–7日(口頭発表)
(2) 辻本諭輝, 櫻井庸明, 関 修平「多関節高分子の構築とその特異な自己組織化」 第65回高分子討論会, 神奈川大学横浜キャンパス, 2016年9月14–16日(口頭発表)
6.関連特許(Patent)
なし







