利用報告書

分子処理が誘起する単層二硫化モリブデンの高発光特性に関する研究
桐谷 乃輔1), 山田 悠貴1)
1) 大阪府立大学大学院工学研究科

課題番号 :S-19-NR-0018
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :分子処理が誘起する単層二硫化モリブデンの高発光特性に関する研究
Program Title (English) :Studies on strong photoluminescence property of monolayer MoS2 via molecular
treatment
利用者名(日本語) :桐谷 乃輔1), 山田 悠貴1)
Username (English) :D. Kiriya1), Y. Yamada1)
所属名(日本語) :1) 大阪府立大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Engineering, Osaka Prefecture University

1.概要(Summary )
次世代の電子光学材料として近年脚光を浴びている遷移金属カルコゲナイドは、金属原子及びカルコゲン原子より構成され、MX2 (M = 遷移金属原子, X = カルコゲン原子)と表される層状構造を持つ一群である。一層当たりの厚みは僅か3原子層 (~0.7 nm)であり、遷移金属原子とカルコゲン原子の組み合わせを適切に選ぶことにより、半導体特性を示すことが知られている。遷移金属カルコゲナイド系材料研究の代表的な対象として、本研究でも対象とする二硫化モリブデン(MoS2)が挙げられる。Mo原子およびS原子から成る3原子層を一層とするレイヤが、数層積み重なって形成される材料である。直接遷移型の半導体であることが知られており、透明発光デバイスや太陽電池への展開が期待される。しかしながら、この材料を光学デバイスや物性を発展するにあたり、低い量子収率(1%程度)がボトルネックとなっている。
我々は、単層のMoS2の光学特性の高特性化の手法として分子処理に着目して研究を行っており、高フォトルミネッセンス強度の発現に成功した。分子処理前後において100倍以上のフォトルミネッセンス強度の上昇が達成されることを確認している。本結果は、ポストシンセシス分子プロセスにより光学的に高品質な単層MoS2へと改質できることを意味している。この高発光化の化学的要因の探索は、本分子処理を他の遷移金属カルコゲナイドへと一般化する上で重要と考えられる。そこで、X線光電子分光法を用いることによって、この物理化学的な要因を調べるべく、奈良先端科学技術大ナノテクノロジープラットフォームの装置を利用させて頂きたく申請に至った。
2.実験(Experimental)
作製した高フォトルミネッセンス光を示すMoS2に対して、多機能走査型X線光電子分光分析装置(XPS)を利用した分析を行った。測定には、岡島康雄様の協力を得、得られたスペクトルに対しては、武田さくら助教の協力を得ることで、円滑な実験が可能となった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
測定の結果、オリジナルおよび高フォトルミネッセンス光を示す状態変化後のMoS2の双方において、明確なMoおよびSに由来するシグナルに変化は見られなかった。このことから、MoS2そのものにはXPSで検出できる分解能においては維持されていることが分かった。興味深いことは、この状態変化に必要となる分子種が表面に僅かに堆積していることが明らかとなり、分子種の吸着が高フォトルミネッセンス光を誘引していることが、示唆されるに至った。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の実施にあたり、岡島康雄様および武田さくら助教の多大なご協力を賜ることで円滑に実施することができた。心より感謝の意を示します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 山田悠貴他、第80回応用物理学会秋季学術講演会、2019年9月.
(2) Yuki Yamada他、Materials Research Meeting 2019、2019年12月.
(3) Daisuke Kiriya, 236th ECS Meeting, 2019年10月17日 (Invited).
(4) Daisuke Kiriya, 7th Global Nanotechnology Congress and Expo., 2019年12月4日 (Invited).
6.関連特許(Patent)
なし

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