利用報告書
課題番号 :S-19-MS-0002
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :分子間力の精密制御を目的としたマイクロ空間の開発と新規物質材料の創製
Program Title (English) :Microflow channel as a novel platform for molecular manipulation
利用者名(日本語) :神崎 千沙子, 沼田 宗典
Username (English) :C. Kanzaki, M. Numata
所属名(日本語) :京都府立大学大学院 生命環境科学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Life and Environmental Science, Kyoto Prefectural University
1.概要(Summary )マイクロフロー空間では反応のダイナミクスは流通距離で理解・制御可能である。このマイクロフロー空間を流通型の分子集積の場として捉え、分子間相互作用の速度論的解析を様々な機能性分子を標的として実施する。「時間(反応過程)を空間で理解・制御」するマイクロフローの際立った特徴と各種分光分析を組み合わせると、分子会合ダイナミクスを直接観察しながらその場で瞬時に制御することが原理的に可能となり、新規物質材料の開発に直結すると考えられる。経験と勘に依存してきた、速度的な物質創製過程に新たな制御軸を導入することになり、実用的にもまた 学術的にも極めて大きなインパクトが期待される。
マイクロフロー内を流通する溶液を分光測定するためには、マイクロチャンネルの幅や深さ、さらには断面形状を分光測定に合わせて適切にデザインする必要がある。またマイクロチャンネルの素材には一般に加工が困難とされるホウケイ酸ガラスを用いる必要があり、こうした特殊なマイクロチャンネルの作成には高度な技術が要求される。本協力研究においては、マイクロフロー空間を流通する溶液の分光測定を実施するための特殊なマイクロフローチャンネルを独自に設計しその作製を行った。
2.実験(Experimental)
松浪硝子工業社製の特注カバーグラス (70x30mmxt 0.7mm) の表面にクライオバック社製小型2源RFスパッタ装置であるRSP-4-RF3×2を用いてクロムおよび金のスパッタ成膜を行った。次に、フォトレジスト剤のスピンコートを行い、ナノシステムソリューションズ社製マスクレス露光装置を用いてチャンネルパターンの露光を行った。チャンネルは幅200μmまたは100μmとし、十字型またはY字型合流部をもつ設計とした。現像はAZ300MIFを用いて行った。露光したパターン上の金、クロムのエッチングを行った後、深さが45μmまたは20μmとなるようにチャンネルパターンのガラスエッチングを行った。カバーグラス上のレジスト・金属膜を完全に除去し、卓上フライス盤を用いて溶液導入部の穴開けを行った。チャンネルパターンの確認はKLA-Tencor社製段差計、Zygo社製三次元光学プロファイラ、及びオリンパス社製光学顕微鏡を用いて行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
目的とした分子集積過程を分光測定するための特殊なマイクロチャンネルの作製を達成した。エッチング処理の際に内壁に凹凸ができたチャンネルがあるが、溶液の流通を妨げるものではないと判断した。今後、作製したマイクロチャンネルを用いてin-situ分光測定を実施していく予定である。ここで得られた知見をさらにチャンネルの設計へとフィードバックさせチャンネル断面形状の最適化を実施するつもりである。様々な機能性分子の集積過程の観察を通してデータを蓄積し、分子から超分子構造さらに機能材料に至るプロセスを1本の流 れの中で連続的に理解・制御する次世代の物質創製技術の確立を最終目標としたい。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 的場聖太・稲川有徳・福原学・岡田哲男・成島哲也・岡本裕巳・沼田宗典, 日本化学会 第100春季年会, 令和2年3月24日.
(2) 神崎千沙子・稲川有徳・福原学・岡田哲男・成島哲也・岡本裕巳・沼田宗典, 日本化学会 第100春季年会, 令和2年3月24日.
6.関連特許(Patent)
なし