利用報告書
課題番号 :S-15-KU-0038
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :単層カーボンナノチューブを用いたグラフェンライクカーボンの酸化電位vs. pHダイアグラム
Program Title (English) :Oxidation onset potential vs. pH diagram for a graphne-like carbon using single-walled carbon nanotubes
利用者名(日本語) :冨永 昌人
Username (English) :Masato Tominaga
所属名(日本語) :熊本大学大学院自然科学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science and Technology, Kumamoto University
1.概要(Summary )
グラフェンライクカーボンは燃料電池や蓄電池のプラットフォーム電極として既に広く利用されている。一方で、炭素の酸化反応の詳細は不明なことが多い。炭素電極の解析の測定法が限られること、またそれが高感度でないこと、高感度であっても局所的情報に限られることなどの理由のためである。
カーボンナノチューブは、その構造的特徴のために、酸化反応解析の上では一般的な平面構造を有するsp2系炭素よりも得られる情報が多い。例えば、通常の測定では極めて高いアスペクト比を有する単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の先端キャップ部位の酸化を検出することは極めて困難であるが、β-カロテンのSWCNTへの内包挙動をラマン分光検出することで、キャップ構造が酸化破壊される電位を高感度に解析できる[1]。さらに、SWCNTの直径方向振動によるブリージングモード (RBM)に基づくラマンピークから、さらに高感度にSWCNTの酸化反応を解析できる[2,3]。一般的なカーボンの耐試薬性や機械的強度の検討はなされているが、電気化学的な耐酸化性とpHに関するダイアグラムの報告はない。代表者らはin-situ ラマン分光電気化学法を用いて、カーボンナノチューブの耐酸化性についての検討を進めている[1,2]。本研究課題では、ラマン分光測定によって単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の酸化反応の開始電位のpH依存性を検討する。
2.実験(Experimental)
金電極上にSWCNTをダイレクト合成法によって作製した。SWCNTのG/D比は約20を示し高品質なものであった。その場ラマン分光電気化学測定には、ラ
マン分光装置(ナノフォトン株式会社RAMANtouch)を用いた。また、走査型電子顕微鏡を用いての表面の観察も合わせて行った。電解質溶液には各pHに調製した0.1 M HClO4 + 0.1 M NaOHの水溶液を用いた。参照極には、銀|塩化銀|飽和KClを用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ClO4-を含む溶液 (pH 7)中でのSWCNTのRBMは、-0.2 V (vs. Ag|AgCl|sat’d KCl)印加時のピーク強度を基準にすると、0.4 V印加後の-0.2 V印加時のピーク強度は、初めのピーク強度を示した。しかし、0.8 Vの印加後では、 -0.2 Vを印加しても初めの基準のピーク強度を示さなかった (Fig. 1)。このピーク強度の不可逆性が観測された電位を酸化開始電位 (Eox)とした。各pHにおけるSWCNTのEoxをpHに対してプロットしたところ、Eoxは酸性および中性領域では約0.65 Vの一定の値を示すことが解った。また、アルカリ領域では直径サイズ依存性が観測された。すなわち、直径の大きいSWCNT(直径 1.2〜1.6 nm)のEoxは0.2 V、それの小さい場合(直径 0.8〜1.0 nm)は0 Vの一定の値を示すことが解った。
4.その他・特記事項(Others)
(1) M. Tominaga, Y. Yatsugi, N. Watanabe, RSC Advances, Vol. 4 (2014) pp.27224-27227.
(2) M. Tominaga, Y. Yatsugi, M. Togami, RSC Advances, Vol. 4 (2014) pp.53833-53836.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Masato Tominaga, Aiko Sasaki, Makoto Togami、Analytical Chemistry、Vol. 87 (2015) p.p. 5417-5421
(2) Masato Tominaga, Natsuki Noda, Terutaka Hashiguchi, Hiroyuki Mizuta, Daisuke Kawai, Makoto Togami、Electrochemistry Communication、Vol. 59 (2015) p.p. 32-35.
(3) M. Tominaga, Y. Nagahama, Y. Yatsugi, S. Sakamoto, The Sixteenth International Conference on the Science and Application of Nanotubes (NT15), 平成27年6月30日.
(4) M. Tominaga, Y. Nagahama, Y. Yatsugi, The 66th Annual Meeting of the International Society of Electrochemistry (ISE2015), 平成27年10月5日.
(5) 冨永昌人, 第 49 回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム, 平成27年9月8日(特別講演).
(6) 冨永昌人, 文部科学省「ナノテクノロジープラットフォーム」事業, 九州大学 分子・物質合成プラットフォームセミナー, 平成28年1月12日(招待講演).
6.関連特許(Patent)
なし







