利用報告書
課題番号 :S-18-NU-0008
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :口腔スピロヘータの遊泳速度と溶媒の粘性との関連性に関する検討
Program Title (English) :Correlation between viscosity of medium and motility of oral spirochete
利用者名(日本語) :永野恵司
Username (English) :K. Nagano
所属名(日本語) :愛知学院大学歯学部微生物学講座
Affiliation (English) :Dept. Microbiology, Sch. Dentistry, Aichi Gakuin Univ.
1.概要(Summary )
スピロヘータは、細長いらせん形をしたグラム陰性細菌を指し、これに属する細菌は、菌体を回転させることで推進力を発生し、溶媒中を遊泳運動する(下図参照)。
ある種のスピロヘータ(Borrelia属)の遊泳速度を検討したところ、溶媒の粘性の増加に伴い、遊泳速度が上昇するということが報告されている。しかし、スピロヘータの形態や回転力は多様であり、他のスピロヘータも同様とは限らない。本研究の目的は、代表的な口腔スピロヘータであるTreponema denticolaの、種々の粘度の溶媒中における遊泳速度を測定することであるが、まずは、種々の濃度(w/w %)のメチルセルロース(MC)水溶液の粘性を測定し、MCの濃度と粘性との関係(関数)を検討した。
2.実験(Experimental)
分子量15、50、100、400、1500、4000のMC粉末を蒸留水に溶解し、数日間転倒混和を行い、0.1%~4%の水溶液を調整した。各MC溶液を1 mlずつ、1 cm光路長のキュベットに注いだ。そこに、粒径100 nmのポリスチレンビーズ懸濁液(2.7%)を1 μl添加し、十分に攪拌し、懸濁した。懸濁により生じた気泡を脱気したのち、37℃に保温した。37℃にて十分保温したのち、動的光散乱法により、みかけの粒径測定を行った。すなわち、貴事業により利用させて頂いた、粒径測定装置[ゼータ電位・粒径測定システム(ゼータ電位、粒径、粒度分布)、大塚電子株式会社製ELSZ-2]にMC溶液およびポリスチレンビーズの添加したキュベットをセットし、70回粒径測定を行い、その平均値をみかけの粒径とした。さらに、この測定を各検体3回ずつ行い、平均値及び標準偏差を求めた。その後、計測されたみかけの粒径の平均値から粘度を算出した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
分子量15のMCは、4%水溶液でも、ピペットで秤量可能な程度の粘性であったが、分子量が増加するにつれ粘性が上昇し、分子量4000では、1%を超えると、ピペットでの秤量は困難となった。ピペットで秤量可能な濃度から、2倍希釈列を6段階作製し、実験に供した。各分子量、各濃度のMC溶液のみかけの粒径を粒径測定装置を用いて測定したところ、再現性良く、測定でき、それらの値から、粘性を求めることができた。その一例を下に示す。
今後は、37℃保温下で、それぞれのMC溶液中に、活発に運動性を示す状態まで培養したT. denticolaを加え、位相差顕微鏡、あるいは暗視野顕微鏡観察下で遊泳速度を測定する計画である。
4.その他・特記事項(Others)
名古屋大学設置の粒径測定装置の使用に際し、名古屋大学伊藤始氏の支援を得た。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。